物語.35

その夜、私は友人に電話をかけまくっていた。とくかく年末に向けてアルバイトが足りないのだ。

東野君に坂本さん、日向君に派遣のおばちゃん等々、最終日までの5日間は皆フル出勤だ。しかし、年末福袋大作戦をショッピングセンター側の指示により実行しなくてはいけなくなり、このメンバーでは全く追いつかない。

そのため、仕事納めとなる友人達で手伝ってくれるメンバーを探しているのだ。

「ごめん!本当に無理なのは承知でさ!時給1000円でどう?」

ほとんどの友人が予定ありと言って、申し訳なさそうにあやまっては断った。

中には「こんな面白いこと、何故早く言ってくれないのか?」と言う子もいたが、実際早く分かっていたら普通の募集機関でとっくにアルバイトを雇っている。

「やばい…。もう、私死ぬ可能性があるわ…。勇一も…。いや、あり得ない。それだけは無いわ」

友人などでは構わないのだが、絶対に彼氏と一緒には働くことができない。見たくないものを見てしまうだろうし、当然、相手もしかりだ。落胆して私は棚の奥にあるカップうどんを探した。その時、突然電話の激しいバイブ音が鳴った。

「ひっ!」

私は驚きのあまり、意味不明な叫び声を上げてしまった。何となく気恥ずかしくなってしまい、1人で笑いながら電話を取った。

「ちょっと、沙織。ごめんね。メール返せなくて!」

「理沙!こちらこそ申し訳ない。どうしたの?」

理沙と私が呼んだ女性は、高校時代からの友人だ。ナレーター事務所に入っているものの、イマイチ目が出ず、パッとした仕事は未だやってこない。

そのため、派遣業務を続けながら、仕事のある日は休む。というローテションを続けている。

「いや、それ私でいいならやるよ?だって、年末暇ですから!あははは!」「ちょっと、それって良く無いでしょ。もう、でも正直助かるかも」

「でも、会社は大丈夫なの?」

「一応さ。営業部長とは仲良くやれてるから了承は貰ってるの。ダメ元でやってみろって言ってたし」

これは助かった。不安なのが、バカなことを言い合うおふざけ仲間だったので、仕事中暴走してしまわないかだ。しかし、今はそんな事を考えている暇はない。

二つ返事で、彼女の佐々木年末短期アルバイトデビューを祝った。

つづく

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