食のグローバリゼーション 4

香ばしい煙をたなびかせながら回転するスパイシーな肉塊

~ トルコ ケバブジュの料理人 ~

どこの誰が使い始めたか全くわからないが、「世界三大」、「日本三大」と言う言葉をよく耳にする。各々のジャンルを代表するものに、冠たる称号を与えられる。夥しい数の「三大」が語られる中で、料理の分野にも世界三大が選出されている。一般的に、中華料理、フランス料理に並びトルコ料理が、世界三大料理の中に名を連ねる。中華料理、フランス料理に対して異を唱える日本人はまずいないだろうが、トルコ料理となる首を傾げる人もいることも珍しくないだろう。トルコ料理は日本人にとって、それ程馴染み深い料理とはいえないからだ。

でも、まだまだ数は少ないながらも、日本にもトルコ料理のレストランが、登場し始めてきている。時折、街中でも「ケバブ」を販売する屋台の車を見かけることだってある。「ケバブ」は、代表的なトルコ料理の焼肉であり、その種類は豊富だ。四角形に切った肉を串に刺して焼く「シシ・ケバブ」、トウガラシを効かせて焼く「アダナ・ケバブ」、そして、最もポピュラーなものが「ドネル・ケバブ」だ。

「ドネル」はトルコ語で、回転するという意味があり、「ドネル・ケバブ」を直訳すると「回転焼肉」となる。トルコの街中を歩くと、いたるところで「ドネル・ケバブ」を焼く光景を見かける。「ケバブジュ」では、通りに面してかまどを設置しているところが多い。奥の調理場という概念とは対照的な「正面のかまど」だ。「ドネル・ケバブ」は、トルコの国民食と言えるだろう。

「ドネル・ケバブ」のレシピは独特のものだ。様々な香辛料やヨーグルトを使ったつけ汁に、スライスした肉を漬け込む。しっかりと下味をつけた肉を何重にも積み重ね垂直に串刺しする。人の背丈ほどもある串を回転させながら、グリル機のロースターでじわじわとあぶり焼きする。熱源は、ガスを使ったもの、電熱器を並べたもの、そして炭火を使う店もある。垂直に吊るされた肉塊を側面から熱し続ける。大きな肉塊を均一に焼くには、はみ出した肉を細長いナイフで切り落とし、表面を整えなければならない。焼き加減を見ながら、何度もスプーンで独特のタレを塗り続ける。最後に、焼き上がった外側の褐色の層をナイフで薄く削ぎ落とす。

巨大な肉片を前に、細長いナイフを持つ「ケバブ」の料理人には、戦闘シーンを思わせるような豪快さがある。ところが、このナイフを使いこなすには熟練の技が必要となるようだ。未熟な人がナイフを入れると、細かく厚ぼったいスライスとなってしまうという。熟練者だと、薄く広いスライスとなる。回転する肉塊の形を整え、最後にスライスする職人のアートが、味覚のアートを実現させていると言うことができる。

「ケバブ」に使う材料は、羊肉のマトンやラムが最もポプラーだが、子牛、牛肉、シチメンチョウ、鶏肉なども使うことがあるようだ。「ケバブ」を焼いている串のまわりには、油を滴らせながら、香ばしい煙が周囲に漂い、食欲がそそられる。空腹のときには、知らず知らずの内に、足が止まってしまう。注文をすると、即座に手際よく肉を削ぎ落としてくれる。

皿に盛りつけられた薄いスライス状の焼肉は、そのままメインディッシュとして食べたり、ピタやパンに挟んでトルコ・サンドイッチとして味わったりする。ヨーグルトを添えると、「イスケンデル・ケバブ」に変身する。羊肉には臭みがあると言われるが、数々のスパイスを使ったタレ焼きにすると、臭みなど全く感じることはない。様々な種類の「ケバブ」を味わうと、トルコ料理が世界三大料理に数えられることが頷ける。

 

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