急ぎで揚物をし終え、そのまま売り場にダッシュした私は、すっかりスターバックスのことを忘れていた。
「おまたせ!えぇと…。イカ天と中華揚げ…」
「店長!レジお願いします」
「え?あぁ、わかったわ!」
「すみません!配送のお客様です」
とにかく、目が回るとこのことで、あっという間に時間が経過していった。
「店長と由香さん、休憩行って下さい。今なら、僕と日向君でどうにかなりそうなんで」
「大丈夫?」
「福袋ももう今日分は無いですし…。問題なさそうですね」
「配送来たら、あなた達包まないでいいからね」
「わかってますよ」
「自慢することじゃ無いから」
東野君のはからいで、私達は休憩に出た。
「あんまりお腹空いてないんだよね」
「由香。だって、朝から何も食べてないでしょ?大丈夫なの?」
「度々、ご試食させて頂いてたんで」
「ちょっと、もう何してんの?構わないけど、相変わらずね」
「でしょ。これだからさ、ダメなんだよね。ねぇ、コーヒー飲まない?」
「良いわね。7階にスタバある」
「オッケー。完璧じゃん」
「取り敢えず、この汚いエプロンと脂臭さをどうにかしてね」
ロッカーに向かい、そそくさとエプロンを取り、上着だけを来た姿で7階まで上った。
「そういえばさ」
「ん?」「勇一君とは上手くやってるの?」
「え、あぁ。まぁね」
「まぁねって…。何かあったの?」
「何も無いよ。むしろ幸せだし、平々凡々と暮らしております」
「つまんないわね。いつも、沙織って彼氏と燃えていないイメージがあるんだけど」
「そう?だって、いつもトラブってても疲れちゃうでしょう。平和主義なの」
従業員用のエレベーターが5階で止まり、そのフロアの従業員が乗ってきた。由香は他人の存在おかまい無しに話続ける。
「全く。私なんてさ、クリスマス前に振られたからね。意味わかんないでしょ。いきなり“世界を広い視野で見たくなった”とか言ってさ。どうせ、他に女が出来たんだろうけど、別にそこまで好きじゃなかったし、私追う恋愛は性に合わないから」
「追われてたのに捨てられること多いよね、由香って」
「そう~。よくわかってんじゃん。コレ、何なんだろうね」
「さぁ…」
エレベーターが7階に止まり、バツが悪そうな顔をした男性従業員が怒濤のスピードで、その場を去って行ったのが私たちの大きな笑いを誘った。