「アートコレクター」

近年、日本だけでなく、世界的規模で話題になったNY在住のアートコレクターのハーブ&ドロシー夫妻。

ミニマルアートやコンセプチュアルアートなど、前衛的な作品を中心に、僅か1LDKの部屋に最高の目利きで選んだアート作品をコレクションしていたことで注目されていました。

二人とも普通の勤め人でありながら、その鬼集ぶりは類を見ない程の勢いであり、最終的にアメリカの国立美術館であるナショナル・ギャラリーへの寄贈を経て、多くの場所で夫妻のコレクションを展示するまでに発展しました。

この膨大なコレクションを1点も販売せず、アートは金持ちの道楽という概念を打ち壊すそのスタイルはまさに特異であり、我々の心を感動させる素晴らしいものです。

特にハーブの審美眼はアート業界でもトップクラスの…いやトップとも言える程の目利きであり、彼が目を付けていた売れないアーティスト達は、今や飛ぶ鳥を落とす勢いの有名アーティストばかりです。

さて、そんなハーブも昨年2012年に息を引き取り、この世に別れを告げました。アート業界にいない日本の方々であれば、映画を見るまで知りうることはそうそう無かっただろう、この天才アートコレクターですが、アートを好きになれる、本当に大切なことを教えてくれました。

それは“アートが好き”という感情と“アート作品を自分の感覚で評価する大切さ、アーティスト達への愛情とリスペクトの心”なのです。

彼らはまず、直接アーティストと出合い、彼らのアトリエにある様々なものをアートとして捉えています。

そのため、アーティストが完成させたものでは無く、その過程で扱ったものなどを案外安値で購入します。

“何故?”と思うでしょうが、彼らはアーティストの名声だけで購入したり(金額的な問題も踏まえ)絶対に完成品だから美しいという、安易な基準は設けていないのです。

そのアーティストが完成に向かってアイデアを出した途中の作品、ボツ作品、そして床に落ちている道具など、アーティストが生み出す全てがアート作品として、夫妻の目に止まるのです。

この行動から教えられた真実が、コレクターというのは、金任せに作品を購入し、人に見せびらかすためのものでは無いということです。

本当に“アートが好き”という心を純粋に持ち、自分たちの出せる金額内で本気で吟味・目利きをして購入し続けることなのだと実感しました。

アートを本当に知っているからこそ、本物のコレクターとして続けられてきている証拠でしょう。

ハーブが亡くなったのは残念ですが、是非、日本でも展覧会を行なって頂き、彼ら夫婦の人生を直接のコレクションから感じてみたいと願っています。

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