12月31日、大晦日の日というのは実は売り上げはそこまで高くない。勿論、普段に比べれば高いのだが、前日の30日が盛り上がる。
31日の夜は家族でゆっくり過ごしたり、帰省したりと何かと忙しいようで、客の引きも結構早いのが特徴だ。
「いやぁ、店長。どうにか、売り上げ取れましたね」
「本当。信じられないわ。これも、みんなのおかげよ」
「ま、でしょうね」
「いや、由香サンいてくれて、マジ助りました」
ラストの日の遅番は私、由香、東野君。彼は年末年始は企業がお休みなので就活はお休みだ。
「東野君さ。ここに、就職しちゃえばいいじゃん」
「いや、考えたんですけどね。ずっと売り場ってきつくないですか?」
「フリーターよりはマシでしょ」
「…」
由香は本当にズケズケ人の心をえぐって行く。まぁ、それが面白く聞こえてしまうのだから、彼女の特権とも言える。
「そういえば、東野君は年始はどうするの?」
「実家に帰ります。すみません。休みもらっちゃって…」
「いいのよ。しっかりと両親に顔を見せてくるのよ」
「そうそう。就職してなくても、息子は可愛いものなんだから」
「それ、言わないで下さいよ…」
売り場には笑い声が響いた。
「すみません。このパックって割引ですか?」
「え?あ、はい、あれ」
そこには何と勇一がいた。
「驚いた?いや、そろそろ終わりかな、と思ってね」
「ちょっと。まだ、終わらないよ」
「まじ?まぁ、コーヒーでも飲んで待ってるわ」
「うん。あ、おでんは?」
「はは、要らない」
勇一は由香と東野君に軽く会釈して、上に去っていった。
「あれ?店長の彼氏さんですか?やべぇ、何かオシャレな雰囲気がやべぇ」
「それだけが取り柄だからね」
「勇一君、迎えにくるなんて愛されてるじゃん。上でコーヒーってことは…」
「ちょっと、由香。変なこと考えてるんじゃないでしょうね」
「終わったら、私も一緒に上に行くわ」
「もう!」
結局、この後はほんのちょっとだけお客様が、割り引いたおでんパックを買いあさっていき、キレイに商品が無くなった。
「お疲れ様。東野君、由香本当にありがと。由香なんて忙しいのに、本当にごめんね」
「あれ?来年は私ダメなの?」
「あなた…。ここでやる気なの?」
「だって、ラクだし面白いしシフト融通きくじゃん。アルバイトだったら、ラクに越したことはないでしょ?」
「大歓迎ですよ、由香サン」
「全く…。また聞いてね」
由香は本当に恐ろしい。しかし、かなり戦力になることは間違えなさそうだ。そそくさに閉店準備を終え、私たちはロッカーへ向かっていった。