物語.39

12月31日、大晦日の日というのは実は売り上げはそこまで高くない。勿論、普段に比べれば高いのだが、前日の30日が盛り上がる。

31日の夜は家族でゆっくり過ごしたり、帰省したりと何かと忙しいようで、客の引きも結構早いのが特徴だ。

「いやぁ、店長。どうにか、売り上げ取れましたね」

「本当。信じられないわ。これも、みんなのおかげよ」

「ま、でしょうね」

「いや、由香サンいてくれて、マジ助りました」

ラストの日の遅番は私、由香、東野君。彼は年末年始は企業がお休みなので就活はお休みだ。

「東野君さ。ここに、就職しちゃえばいいじゃん」

「いや、考えたんですけどね。ずっと売り場ってきつくないですか?」

「フリーターよりはマシでしょ」

「…」

由香は本当にズケズケ人の心をえぐって行く。まぁ、それが面白く聞こえてしまうのだから、彼女の特権とも言える。

「そういえば、東野君は年始はどうするの?」

「実家に帰ります。すみません。休みもらっちゃって…」

「いいのよ。しっかりと両親に顔を見せてくるのよ」

「そうそう。就職してなくても、息子は可愛いものなんだから」

「それ、言わないで下さいよ…」

売り場には笑い声が響いた。

「すみません。このパックって割引ですか?」

「え?あ、はい、あれ」

そこには何と勇一がいた。

「驚いた?いや、そろそろ終わりかな、と思ってね」

「ちょっと。まだ、終わらないよ」

「まじ?まぁ、コーヒーでも飲んで待ってるわ」

「うん。あ、おでんは?」

「はは、要らない」

勇一は由香と東野君に軽く会釈して、上に去っていった。

「あれ?店長の彼氏さんですか?やべぇ、何かオシャレな雰囲気がやべぇ」

「それだけが取り柄だからね」

「勇一君、迎えにくるなんて愛されてるじゃん。上でコーヒーってことは…」

「ちょっと、由香。変なこと考えてるんじゃないでしょうね」

「終わったら、私も一緒に上に行くわ」

「もう!」

結局、この後はほんのちょっとだけお客様が、割り引いたおでんパックを買いあさっていき、キレイに商品が無くなった。

「お疲れ様。東野君、由香本当にありがと。由香なんて忙しいのに、本当にごめんね」

「あれ?来年は私ダメなの?」

「あなた…。ここでやる気なの?」

「だって、ラクだし面白いしシフト融通きくじゃん。アルバイトだったら、ラクに越したことはないでしょ?」

「大歓迎ですよ、由香サン」

「全く…。また聞いてね」

由香は本当に恐ろしい。しかし、かなり戦力になることは間違えなさそうだ。そそくさに閉店準備を終え、私たちはロッカーへ向かっていった。

つづく

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