食のグローバリゼーション 6

脇役に甘んじることなく、酸っぱさと辛さで主役に躍り出る2つのサラダ

~ タイ料理 ヤム・ウンセン/ソム・タム ~

食事の満足度を決めるのは、当然メインディッシュだ。肉類、魚介類を食材とし、シェフが創意工夫を凝らして調理する。素材を巧みに活かして創造された料理が、口の中で至福のハーモニーを奏でると、食のアートを体験することができる。

しかし、いくら美味しいからと言って、メインディッシュばかりを食べ続けていては、味に変化がないため飽きることになりかねない。少し変わった味の料理を口にすることによって、気分や口の中をリフレッシュすると、メインディッシュの味わいが引き立つ。添え物としての箸休めが、どうしても必要になる。

箸休めとしては、漬物、和え物、サラダなど、味を主張しすぎることなく、あっさりした料理が添えられることが多い。でしゃばらずに控えめに、食事の緩徐楽章が嵌め込まれる。メインディッシュと箸休めがバランスよく協調すれば、食のシンフォニーが完成する。ところが、タイ料理のサラダ、和え物には、しっかりとした味と存在を主張する料理が豊富にある。

ヤム・ウンセンは、タイ料理の中でも代表的な料理だ。メインの食材に春雨を使っているため、日本国内のタイ・レストランでは「春雨サラダ」と呼ばれることもある。タイ語で、「ヤム」は「和える」、「ウンセン」は「春雨」の意味をもつ。

ヤム・ウンセンの基本的なレシピは、春雨やえびを茹でた後、たまねぎやセロリなどの野菜と一緒に、タイの魚醤油のナムプラー、砂糖、ライムの一種のマナオの果汁、唐辛子などで和え、最後にパクチーを乗せる。動物性の食材としてえびを入れるのは、えびは全ての宗教で食材として受け入れられているからだという。ヤム・ウンセンという名で出される料理であっても、レストランによって独自のレシピが考え出されている。一般的には、基本レシピに豚のひき肉や、鶏のささみを入れることが多いようだ。

ナムプラーの発酵臭に、マナオの酸っぱさ、唐辛子の辛みが絶妙のバランスをもち、独特の味わいがある。酸っぱくて辛いタイ料理の特徴をしっかりともち、脇役メニューに甘んじることなく、しっかりとした存在感を主張する。

ヤム・ウンセンはピリ辛サラダであるため、激辛通には物足りなさを感じるかもしれない。ソム・タムであれば、どのような激辛通も納得させることができるだろう。レストランによって辛味に大きな差があるが、一口食べると、口から焔が出たり、口の中が痛くなったりする。

熟す前の青パパイヤをメインの食材とし、様々な種類の食材、調味料を加えて、「クロック」という石臼に入れ、すりこぎのような棒で叩くようにして混ぜるとソム・タムが完成する。木の棒で臼を叩く音には食欲がそそられてしまう。青パパイヤに和える食材には、生ニンニク、唐辛子、ナムプラー、マナオ、砂糖椰子のナムターン、ココナッツ砂糖のピープ、タマリンドのマカーム果汁、そして干しエビと炒りピーナッツなどで、レシピはレストランによって各様だ。「ソム」には「酸っぱい」、「タム」には「叩いて混ぜる」という意味がある。

タイ東北部のイサーン地方に暮らす人々にとって、ソム・タムは、欠かすことのできない料理だ。手を伸ばせばすぐにとれるパパイヤを食卓に並べるために、人々が知恵を働かせて産まれた一品だ。パパイヤの甘さ、ライムの酸っぱさ、唐辛子の辛さ、塩のしょっぱさが究極のハーモニーを奏でる。

ヤム・ウンセンやソム・タムなどのサラダは、メインディッシュの脇役に甘んじることなく、タイ料理の本質をもつ代表的な料理となっているのだ。

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