物語.41

2013年という新しい年。一体、私はどう成長できるのだろうか。毎年、無難に過ごせれば良い、と願いつつも、心の奥底では“私だけが幸せになれば良い”というイヤらしい想いも出てくるのが面白い。

世の中には“世界中の人々が幸せになりますように”と願う人もいるようだが、私は一切そんなことは思わない。というか、叶うはずのないことを願っても無駄だから。

不幸があるから、幸福があり、幸福があるから不幸がある。この絶妙のバランスで世界はなりたっているのではないか。仮に世界全体が隈無く幸せになった瞬間、その幸せの中での不幸を誰かが必ず見つける。逆もしかり、とにかく、こんな下らないことは願わない。

「ちょ、あははははは!」

「ヤバいですね」

「沙織、どうした?早くこっち来なよ」

「あ、ううん。大丈夫、今行きまーす」

我に返った私は、冷蔵庫にから人数分の追加のビールをリビングまで運んだ。勢いとは言え、全く予定していなかった来客が2人、しかも男性の方は、全く知らない人。

普通に真面目に生きているはずなのに、二子玉川に移り住んでから、勝手に様々なイベントが降り掛かってくる。

「本当、遠藤ヤバ過ぎるでしょ」

「気合い入ってるなぁ…」

この人達は年末恒例のお笑い番組を見ている。どうも、笑うといけない、という決まりがあるらしい番組企画が視聴者の心を掴み、国民的人気のモンスター番組になっている。

「そういえばさ、勇一君いつから仕事?」

「えぇっと…。4日かな」

「まぁまぁ、早い方ね。梶原君は?」

「僕は2日です」

「それ、由香。レジで聞いてたじゃん」

「あら?もう、梶原君に見とれてて忘れちゃった」

「いや、照れますね!ハハハ!」

スターバックスから由香がさらってきた青年は梶原君と言い、勇一と同じ年のようだ。勇一はコーヒーが大好きなので、コーヒー談議で盛り上がっていた。

私にとってみれば、良くわからない体育会系の男子という印象しかない…。悪い人ではないっぽいが。

「梶原君て、スタバずっとしてるの?」

「ハイ。学生の頃からやってるんですが…、本業はモデルをしてるんですよ」

「マジ!?やっぱね。スタイルも良いし、イケメンだし!」

「へぇ…、でも社員さんでしょ?」

「いや、契約です。何か大目に見てもらっていて、仕事が入った時はお休みもらってるんですが…。なかなか」

「だよね、だよね」

確かにモデルと言っても、今はビジュアル以外の要素が強く求められている。梶原君も結構苦労しているようだ。

「でもさ、カジはガタイ良いからスポーツ系とかにはよさそうじゃない」

「それ、マネージャーにも言われてて…。年明けに一応アディダスのオーディションの結果がでるんですよね」

「凄いじゃん!応援してる!」

「由香、もうオーディションは終わってるからね…」

勇一が既に“カジ”と呼んでいたり、由香の興奮が凄過ぎてお酒の買い出しに行くハメになりそうだったり。とにかく、数年振りに賑やかな年末を過ごした。

つづく

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