アジアの遺跡に見る時空を超えたアート 31

6本のミナレットに囲まれ、青空の中にくっきりと浮かび上がる三重のドーム

~ トルコ イスタンブル スルタン・アフメット・ジャーミィ ~

「親亀の上に小亀を乗せて、小亀の上に孫亀乗せて、孫亀の上に曾孫亀を乗せて、親亀こけたら、子亀孫亀、曾孫亀こけた。」建築家に教訓を与えるような歌だ。垂直に構造物を作り上げる場合、下部の土台を大きくし、上にいくに従って小さくするのが一般的だ。構造物全体の重さを支え、しっかりとした安定感を築くには、どっしりと土台を固めなければならない。

トルコ最大の都市、イスタンブルの旧市街地に聳えるスルタン・アフメット・ジャーミィでは、最も大きなドームが最上部、下部にいくに従って小さなドームが構成されている。高さ43メートルの頂上部で、直径23メートルのドームが、青空にくっきりと浮かび上がっている。その下に直径は小さくなるが数を増やして、4つの副ドーム、30の小ドームが、末広がりのような構造を作る。親亀が最上部にいて、小亀、曾孫亀が支える構造ではあるが、安定感は損なわれてはいない。最上部の最大直径のドームが、モスクの象徴となっている。

スルタン・アフメット・ジャーミィは、オスマン・トルコの第14代スルタン、アフメット1世の命によって、ビザンチン時代の競技場跡地に1609年から建設が始まった。設計を担ったのは、オスマン・トルコ屈指の建築家、ミマール・スィナンの弟子のメフメット・アーだ。

ミマール・スィナンは、巨大なドームと、鉛筆のような形をした細長いミナレットをモスクの建築に定着させ、オスマン独特の建築様式を確立させた。弟子のメフメット・アーも彼の様式を継承し、7年の歳月をかけて1616年に重厚なモスクを完成させた。スルタン・アフメット・ジャーミィは、オスマン・トルコ最後の巨大モスク建築として語られることもある。

お椀をひっくり返したような三重のドームが最大の特徴ではあるが、ミナレットの数にも他にはない特徴をもっている。聖堂を中心に6本のミナレットが聳え建っている。通常のモスクのミナレットの数は2基、小さなモスクでは1基、巨大モスクでも4基なのだ。世界最大のメッカのモスクには、現在7基のミナレットが建つ。これはスルタン・アフメット・ジャーミィの建設中に、アフメット1世がイスタンブルにメッカ以上のミナレットをもつモスクを建造することをためらい、メッカに1基のミナレットを献納したと伝わる。スルタン・アフメット・ジャーミィは、メッカの聖モスクに次ぐ存在と言える。

巨大なドームやミナレットで囲まれる聖堂の内壁は、青色を基調とした2万枚以上にも及ぶイズニックタイルで装飾されている。そのため、「ブルー・モスク」の愛称で呼ばれることが多い。

聖堂の外には、ドームの回廊で囲まれた中庭がある。中央には八角形の泉が設けられ、モスクに訪れた人々は、ここで身を清める。回廊で囲まれた閉鎖空間は、賑やかな市街地から隔離され、静かな雰囲気が漂い、心身がともに清められていくようだ。回廊にはアーチ型の柱が連続し、天井には幾何学的に模様が施される。アーチと幾何学的は、イスラム教建築の最大の特徴だ。

スルタン・アフメット・ジャーミィには、全体的な構造においても、細部の装飾においても、オスマン・トルコの美的感性が凝縮されている。巨大な石造建築でありながら、無数の円蓋が柔らかな曲線を描き出しているため、外観全体に軽やかさを感じることができる。「ブルー・モスク」の愛称を思い浮かべながらモスクを眺めていると白色の外壁が、心なしか青色を帯びてくるような錯覚に襲われる。

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