物語.43

「生き返る…」浴室で思わず私は声が出てしまった。何といっても、元旦であっても冬は冬。季節は正月など関係ない。この日もばっちりと真冬並の寒さではあったので、いつもより長くシャワーを浴びてしまった。

常日頃、節制はしようと思っているのだが、こうも寒い日々が続くとついガスに水道と、無駄使いをしてしまう。いや、これは無駄などではなく、寒くツライ思いをしないための防衛本能が働いているのだ。

こう思っていると、案外気にならなくなってくる。まぁ、利己的すぎて悲しくなるのだが…。

私はシャワーの温度をかなり熱い温度にして、風呂上がりに冷えてしまわないようにした。おかげで鏡に映る自分の顔が、りんごみたいになってしまって笑いそうだ。

簡単に着替えを済まし、髪の毛を乾かしたら、リビングから声がした。

「もう…意味わかんない。あ、ははは、あはは」

どうしたのだろう…、そっと覗きに行くと誰も起きている気配は無い。しかし、よく見ると寝そべっている由香が笑っている。

「寝言か…。何か、初夢が相当おめでたいようね。さすが、いい性格してるわ」

新年早々、由香には楽しませてもらっている。この娘の良さが世間で認められたら、きっと大人気になること間違い無しだとは思うのだけど…。まぁ、これと言って業界にツテもある訳でも無い私は、由香をそっと応援することぐらいしかできない。

勇一が買ってきた“唐辛子エキス入りボディソープ”も併用したおかげか、体がかなり熱い。コートを着ていくか迷う程だが、外に出れば一気に冷え込むことは間違えないだろう。

私は、コート掛けにかかっている、オーシバルのフード付きPコートを羽織った。

厚手のメルトン生地でできており保温性も抜群。しかも、ちょっと丸みを帯びた雰囲気が私にピッタリなので、かなりお気に入りだ。勇一にも好評だし、このコートと出会えて私は今シーズン大満足している。

やっぱり、コンビ二に行くだけとはいえ、テンション高くいきたいものだ。

私の心は、急に恋する少女的な気分になっていたが、玄関のドアを開けた瞬間に出た「さぶっ…」のトーンが28歳独身という現実に引き戻してくれた。

つづく

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