食のグローバリゼーション 7

テーブルビートが赤色からオレンジ色までのカラフルな彩りをつけるスープ

~ ロシア料理 ボルシチ ~

日本料理では食事のお供に、必ず味噌汁が添えられる。定食などで全ての料理がお盆に乗って出てくる場合には、先ずは味噌汁に口をつけるが、飲み干してしまうことはない。水分の少ない料理を食べて口が渇いたときに、また味噌汁で口を湿らせるのが日本人の食事のスタイルだ。

ところが、ヨーロッパでは食事の最初にスープを飲み干してしまう。コース料理などで、最初にスープのお皿が一つだけ出てくると、物足りなさを感じ少し戸惑ってしまうこともある。スープはオペラで言えば序曲のような役割を担い、後に出てくるメインディッシュへの期待を膨らませるものなのだ。だからと言って味わいがないわけではなく、世界各国にその地方ならではの独特の味わいをもったスープがある。ロシアを代表するスープがボルシチだ。赤みを帯びた色合いが極めて特徴的だ。

ボルシチのメインの食材となるのは、赤カブのテーブルビートだ。日本では手に入りにくいが、ロシアでは様々な料理に使われている。スープの材料となるばかりでなく、茹でたり、蒸し焼きにしたり、甘酢につけてピクルスにしたり、サラダにしたり、調理方法は多種多様だ。ロシアの食事は、テーブルビートに始まり、テーブルビートに終わると言っても過言ではない。

このテーブルビートの色素がスープに染み出し、ボルシチを独特の赤い彩りにする。その他の具材やテーブルビートの量によって異なるが、ボルシチの色は真赤なものから、紫色、オレンジ色など、カラフルな色彩になる。

テーブルビートと、タマネギ、ニンジン、ジャガイモ、キャベツ、牛肉などの食材を炒めた後に、トマトピューレを加えたスープでじっくり煮込むと、ボルシチができあがる。スープの具材は決まっているわけではなく、レストランや家庭、季節によって工夫を凝らした食材を使用する。ソーセージ、ハム、ベーコン、肉だんご、鶏肉、マトン、魚類、ズッキーニ、リンゴ、インゲンマメなどを使うこともあるようだ。ボルシチの故郷ウクライナでは、地方ごとに40種類をはるかに超えるバリエーションがあると言われている。日本の味噌汁の種類を数えることなどできないが、ボルシチの種類も日本の味噌汁に匹敵すると言えそうだ。

ただ、テーブルビートだけは、必ずスープの中に入っている。粘り気のないさらさらとしたスープに、ロシアのサワークリームのスメタナを浮かべる。スープは熱々の状態で出てくることが多く、寒いロシアには欠かせない料理なのだ。ほんのりとした甘みに酸味が加わり、食事のスタートに格好のメニューとなっている。じっくりと煮込まれた野菜には、スープの味が染み込んでいる。具材とスープの味わいに、スメタナがまろやかなコクとアクセントをつけてくれる。

ボルシチの味わいを楽しんだ後に、本格的なロシア料理を味わう。ピロシキ、ペルメニ、ビーフストロガノフ、壺焼きなど、メニューのバラエティーは豊富だ。

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