物語.48

「これ…。超美味しくない!?」

「んん、いいね。牡蛎と鰤の出汁が効いてるよ」

餅まで焼いて作った広島風お雑煮は大成功だった。何と言っても私の料理が上手という訳では無く、素材の良さがこの味を作ったに違いない。

とはいえ、これだけ主役級の食材が一同に介しても、味が濁らないというのはお雑煮の実力を感じる。

このお雑煮は地域によって違うというのだが、日本人というのは本当に想像力が豊な人種であったのだな、と今更感慨深く思ってしまった。

「初詣っていく?」

「あぁ…。そうだそうだ、忘れてた」

正月というのは、寝て食べてテレビを見て、の繰り返しなので、普段、億劫なお参りなどのイベントも輝いて見える。

「でも、混んでるでしょ…」

勇一はいつも否定から入る。

「でも、1月1日のお参りは今日しかできないんだよ」

「まぁ、そりゃそうだけどな。近くどうせじゃ、明治神宮行く?」

「あそここそヤバいでしょ」

「でも、どうせ由香サンと梶原君帰り道でしょ。じゃぁ、いいんじゃない?」

「そっか!勇一クン。ナイスアイデア!あぁ、和服着てくれば良かったぁ」

「持ってるんですか?」

「そうよ。お母さんが着付け教室してるから、色々あるの」

由香のお母さんは有名な和服のデザイナーの娘で、自分でも着付け教室を営み、かなりの人気を博している。

「私の浴衣ならあるけど…」

「そんなの寒くて死ぬわ」

「あはは!いいんじゃないすか?浴衣」

「梶原君。私が凍え死んでいいの?」

「こ、困ります」

なんなんだこの会話…。とにかく、私たちは初詣ということで明治神宮に向かった。正月に友人や彼氏とここまで普通に過ごしたことない私は、正直嬉しかった。

全てがいきなりだったが、年末からのこの流れは嫌いじゃない。

終止笑いながら楽しむことのできる、この仲間達は一生失いたくないとさえ思う。そんなことを思いながら、人は些細なことで別れ裏切られ、孤独になっていくという、私考案のお一人様気楽説もどこか頭の隅には残っている。

明日からの日常が胸を苦しめるが、今という時間を最高に楽しむことだけに専念していた。

つづく

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