食のグローバリゼーション 8

外はカリカリ、中はフワフワのたこ焼きを出汁に浸して食べるたこ焼き

~ 日本 兵庫 明石焼き ~

子どもの好きなおやつには様々なものがあるが、たこ焼きも人気メニューの一つと言えるだろう。一般的には、黄色くて丸い球体にソースを塗り、かつおぶし、青のりをふりかける。湯気の中で、かつおぶしが踊る姿に、思わず食欲がそそられる。

たこ焼きといえば、タコを小麦粉で包んで焼くだけの単純な料理がイメージされるが、地方によって特徴的な作り方や味わい方がある。明石焼きはその代表格と言っていいだろう。ソースをつけずに、出汁に浸して食べることが最大の特徴だが、レシピや作り方も独特のものがある。

タコを包む生地の主材料は小麦粉だが、これに鶏卵をたっぷりと混ぜ、たんぱく質、グルテンを取り除いた小麦粉の浮粉、沈粉を加える。材料を出汁と水でしっかりと溶いた生地を熱伝導性の優れた銅製の焼き板の穴に流し込み、一つ一つの生地に大き目にぶつ切りしたタコを入れていく。軽く焼き上がった後に、専用の棒で手際よくひっくり返し、全体がこんがりと焼き上がれば、明石焼きのできあがりだ。

直径5センチ程度の球形に焼き上がった明石焼きは、小さなまな板のような木製の皿に盛りつけられる。焼き板に上から木皿をかぶせ、ひっくり返して盛りつける。焼き始めてから盛りつけるまでの一連の手順には、職人の技が感じられ、料理人の仕草や様子を眺めるのも楽しいものだ。

木皿に盛りつけられたたこ焼きは、焼き上がりは真ん丸であったにもかかわらず、自らの重さで少し押し潰れたような形になる。鮮やかな黄色の生地は、ふんだんに使った鶏卵の黄身を思わせる。柔らかに焼き上がった明石焼きは、箸で力を入れずに挟んで、昆布や鰹節の量などが秘伝の出汁に浸す。出汁に浸すと型崩れを起こしそうになるが、上手に箸を使って口に運ぶ。表面のみがカリカリに焼き上がった生地は、あつあつ、ふんわり、とろとろで、その中にコリコリのタコが入っている。噛みしめるに連れて感じられる歯ごたえや、歯触りがたまらない。一度食べると、やみつきになってしまう食感と味わいだ。基本的にはソースは使わないが、好みに応じてソースを塗ってから、出汁に浸して食べる人もいる。味わい方にも豊富なバリエーションがあるというわけだ。

明石焼きは兵庫県明石市が発祥の地として知られている。明石では、ふんだんに鶏卵を使うことから、卵焼きと呼ばれることもある。江戸時代の後期から郷土料理として伝わり、160年もの歴史をもっている。現在では市街地の南にある商店街、魚の棚では明石焼き、卵焼きの看板がいたるところに立っている。市内全体では70軒を超える明石焼きの店があり、独自の味わいを競い合っている。

瀬戸内海に面する明石でたこ焼きが発展した理由は、やはり地元自慢の食材だ。明石海峡の潮流にもまれたタコは、カニをたっぷりと食べながら育ち、濃い茶色をした身は引き締まる。明石ダコとして地元の名産品となっている。海の中には夥しい数のタコ壺が投げ入れられている。例年、麦藁帽子をかぶり始める6月から7月の時期が旬の季節と言われ、海から引き揚げられたタコ壺から、タコが這い出してくる。

明石焼きは、子どものおやつと言うより、地元の旬の食材を活かした伝統料理と言うことができそうだ。レシピは明石市から大阪をはじめ近隣諸都市に広がり、今では全国的な広がりを見せている。小腹が空いたときのおやつに格好のメニューだが、昼食であれば明石焼き一皿でも充分だ。食事の最後にはデザートは不要で、明石焼きのエキスが溶け出した出汁を一気に飲み干せば仕上げとなる。

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