食のグローバリゼーション 10

滝のように流れる液状のチョコレートの原型

~ ベルギー ブリュッセル チョコレート・ショップ ~

年齢や性別を問わず、チョコレートは幅広い世代に親しまれている。甘さが人を引き付けるばかりではなく、最近では健康効果が話題になっている。チョコレートの原材料のカカオには、豊富なポリフェノールが含まれる。ポリフェノールには動脈硬化の予防作用や、コレステロール値を下げるなどの効果が期待されるわけだ。一方で、甘さの源となる糖分はメタボの面から敬遠されることもある。

カカオは、熱帯アメリカを原産とするカカオの樹の果実の中にある種子だ。赤道を中心として、南北緯度20度以内の高温多湿な熱帯地方でしか栽培されない。日本やヨーロッパ諸国では栽培ができない植物だ。このカカオをヨーロッパに持ち込んだのは、大航海時代にアメリカ大陸を発見したクリストファー・コロンブスだと伝わる。ホンジュラス付近で種子を手に入れスペインに持ち帰ったのだ。

当初のチョコレートは、カカオ豆をドロドロになるまですり潰し、とうもろこしの粉やバニラ、トウガラシなどのスパイスを加えた「エクソコアルト」と呼ばれる飲物だった。苦み走った飲物は不老長寿の薬とされた。この苦みを消すためにスペインでは、トウガラシの代わりに砂糖を入れるようになる。これが徐々に周辺のヨーロッパ諸国に浸透していき、薬剤は嗜好品へと姿を変えることになった。ベルギーやフランスでは、チョコレートを専門に作るショコラティエが誕生する。

ベルギーでのチョコレート文化を支えたのは、アフリカのコンゴでのカカオのプランテーションだ。第2代ベルギー国王のレオポルド2世は私領として「コンゴ自由国」を築き、天然ゴムやカカオのプランテーションを積極的に押し進めた。中南米原産のカカオが、アフリカで栽培されるようになり、ベルギー本国に持ち込まれた。このカカオが、ベルギーのチョコレート文化を大きく花開かせる役割を担った。

首都ブリュッセルで最も人通りの多い、市庁舎が面するグラン・プラス付近には、お洒落なチョコレート・ショップが点在する。商店街を数十メートル歩けば、必ずチョコレート・ショップに出くわす。どの店にもひっきりなしにお客さんが、出入りしている。

ベルギーも一家では、一年に約4万円のチョコレートを消費しているという。ベルギーでのチョコレートは、中に詰め物を入れた一口大のプラリネが中心だ。無数にあるチョコレート・ショップでは、カカオマスや詰め物にオリジナリティー溢れる工夫を凝らし、プラリネの味を競い合っている。ブレンドされる材料は、ヘーゼルナッツ、マカダミアナッツ、ローストアーモンド、ショートブレッドビスケットなど、バラエティーに富んでいる。

1軒のショップに並ぶ種類もあまりにも多く、慣れないと品定めに相当な時間を要してしまう。全ての種類を1粒ずつ買いたくなるが、鞄がチョコレートだけで、はち切れそうだ。ベルギー人であれば、その日の気分に合わせて要領よくセレクトするのだろう。数あるブランドの中でも、ゴディヴァ、ノイハウス、ガレ、コード・ドール、メリー、ウィッタメールの6つのショップは、ベルギー王室ご用達の店として高く評価されている。

商店街を歩く中で、店の中央に溶けたチョコレートが滝のように流れているショップを見つけた。チョコレートの歴史を遡れば、当初は液状の飲物であった。これがチョコレートの原型なのだろうか。上から下にしなやかに波打つチョコレートは、動きをもったアートのように見えてくる。店内にはチョコレートの甘さが漲り、思わず棚に並ぶプラリネに手が伸びる。

関連記事

アーカイブ

ページ上部へ戻る