アジアの遺跡に見る時空を超えたアート 36

位置を知らせる道標が心のランドマークタワー

~ ミャンマー ヤンゴン スーレー・パゴダ~

社会や経済のグローバル化が進む中、日本の企業は周辺のアジア諸国に進出してきた。世界最大の人口を抱え隣国でもある中国をはじめとして、東南アジアのエリアには、規模の大小を問わず数多くの企業が工場や拠点を構えている。日本経済の成長には、アジア地域の発展が欠かせないのだ。様々な企業が、アジア地域のほぼ全域に基盤を形成しながらも、それに飽き足らず新しい進出先を模索している。

最近、急速に脚光を浴びるようになっているのがミャンマーだ。長年軟禁されていたアウンサン・スーチー女史の解放などで民主化が加速する中、国内のインフラ整備や工場誘致が積極的に進められている。5月の連休中には安倍首相が、日本の首相としては36年ぶりにミャンマーを訪問した。きっとこれから、日本企業のミャンマーへの進出が加速していくことだろう。

首都のヤンゴンは、郊外に行けばのどかな田園風景が広がるが、中心市街地は近代化が進む。ダウンタウンのほぼ中心に位置するロータリーでは、一日中ひっきりなしに車が回転している。ヤンゴンのメインストリートとなっているスーレー・パゴダ通りとマーハ・バンドーラ通りが、ここで交差しているのだ。この環状道路にすっぽり囲まれる形で、仏教寺院のスーレー・パゴダが建っている。車の騒音や市街地の喧騒の覆われるように宗教施設が建つ姿は、他の地域ではあまりないだろう。

道路沿いには商店が軒を連ね、商業施設がパゴダの外壁を作り上げているようだ。もともとは門前町として、仏教に関する用品を販売する店が並んでいたのだ。今でも、僧侶の衣装や、仏具、仏殿に供える花などを売る店が数多くあるが、その間に日用雑貨店や、電化製品を売る店も登場している。スーレー・パゴダは騒々しい環境の中に位置してはいるが、境内に一歩足を踏み入れると周辺の雰囲気とは全く違う別世界が広がる。

数珠つなぎの商店群の中にパゴダの門を見つけ、パゴダの敷地内に踏み入れる。寺院の門と言えば、日本では質素で創建な山門が一般的だが、スーレー・パゴダの門は、金色の細やかな装飾に包まれ、小ぶりながらも遊園地のゲートを思わせる。境内の中央には、高さ46メートルのミャンマーならではの特徴的な構造をもった仏塔が聳える。黄金色に輝きくっきりとした輪郭線を描く尖塔が、空の青色と絶妙の色彩的なコントラストを見せている。傾斜角度を少しずつ変えながら、空に向かって屹立する仏塔には神々しさが漲る。

「スーレー」は、パーリ語で「聖髪」を意味する。インドから持ち帰った仏陀の髪の毛を安置していると伝えられている。パゴダの建立年代は定かではないが、ヤンゴン郊外のシュエダゴォン・パゴダ造営の直後に建てられ、2000年以上の歴史をもつと言う。周辺は市庁舎や最高裁判所などの官庁や、商店街が立ち並ぶ市街地の中心部であるため、通勤の途中や、買物の合間、仕事の休憩時間に気軽に立ち寄ることができる。

一日中、瞑想する人、一心に祈りを捧げる人、静かに佇んでいる人、仲間と歓談する人などの姿が絶えることがない。全ての人々の心にパゴダが深く浸透している。ミャンマーで暮らす人々の日常生活の中には、パゴダで過ごす時間が、なくてはならない時間として、しっかりと組み込まれているのだ。

仏塔は、日中は太陽の光で輝き、夜間にはライトアップされ一日中、黄金色の輝きを失わない。スーレー・パゴダの仏塔は、ヤンゴンの人々に位置を知らせる道標としてだけではなく、心のランドマークタワーとなっているのだ。

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