物語.52

5分程現実と感覚を乖離させていた私だったが、やっと今起こっていることに気付き、今からやってくるお客様のお叱りの言葉に震えた。

「あら?あなた?」

「え?あ、はい。もしかして…」

「そうよ。あの時にいたの男の人だったから分からなかったわ」

「本当に申し訳ございません…道にまで迷ってしまって…」

「もう、いいわ。一応、商品は持ってきたからお渡しするけど」

「も、申し訳ございません。こちら新しいものでございます。あと…返金」

「ありがとう。でも、しっかりしてね。まぁあなたも大変なのは分かるけど」

「いえ…」

「とにかく、こんな所まで来て頂いて悪かったわね。また、お店の方には行くわ」

「はい!お待ちしております」

「あと、朝レジをして頂いた男の子。あの子、暗いわよ。元気になさい」

「う…。申し訳ございません」

「あなた店長さんでしょう?しっかりしなきゃダメよ」

「はい。ありがとうございます。あの…こちらの商品は検査」

「いいわよ。どうせ食べてないし。ただ古かったのか分からないけど、しっかりとチェックして頂かないとね。こちらもお宅のが美味しいから、期待してる分、がっかりしてしまうから」

「はい!以後、徹底して気をつけますので!」

まさか、東野君のダメ出しをされるとは思わかったが、何か大丈夫な雰囲気でほっとした。

「あなたもしっかりしなきゃダメよ。まぁ、こちらもごめんなさいね、こんな所にまで引っぱりだしてしまって」

「いえ…ありがとうございます」

そのお客様は“また行くわ”という言葉を数回残して車で去って行った。あぁ…、全身の体が抜けてしまった。もう、今日はお店に戻る気力は残っていない。このまま直帰したいぐらいだ。

とにかく本社に連絡をして、お店にも連絡をしよう。頭が真っ白になった途端、お腹の虫が激しく鳴りはじめ、急に夕飯の事が頭に浮かんできた。

「今日は飲みに行こう…」

とにかく、今日は疲れた。疲れきってしまったんだ…。私は自分にこう言い聞かせてはスマートフォンで、近所の飲食店の口コミサイトを見まくっていた。

つづく

関連記事

アーカイブ

ページ上部へ戻る