物語.53

私は結局お店に戻り、1時間程作業をして仕事をあがった。

由香に愚痴をこぼし、そのまま死んだ魚のような目で帰宅をした。今日は勇一はまだいない。どこかに飲みに行こうと電車の中では大盛り上がりしていたが、結局乗り継いでお店に向かう時には既に体がダルくなり、その気持ちは消えてしまっていた。

「あぁぁあ。もう、疲れた。というか…疲れた」

とにかく、ぐちぐちと自分に言いかけてはベッドに倒れたり横になったりした。

動きたくない…。たまには良いんじゃないか?そんな時もあって。こう思っては“でもダメだ。ここで寝たらなんかダメ”と何故か自分の奮い立たせようとする。

ツイていない日はまさに思考までツイていない。どうにかして運気を上げなければと思い、家にある何かを思いだそうとした。

ロブションのバケットとバタールに美味しいおかず、旨い酒…。

「あれ?お腹空いてる?私」

そう、結局お腹が空いていただけだったかもしれない。

丁度、休憩に入ろうとした時にお客様のところに向かうハメになったので、今日は何も食べていない。飲みに行ってストレス発散のことばかり考えていて、食物のことはそっちのけだったのだ。

「う~ん…。でも、勇一帰って来るからな。作りだすのは面倒だし…。あ!そういえば」

私は1人ごとの途中で、貰ってから一度も使っていない振りかけがあることを思い出した。しかも、サダハル・アカギの新城さんに貰ったもので、ちょっと大切にしまっておいたのだ。

「そもそも、ご飯炊かなきゃダメだ」

こう思って落胆して炊飯器を見ると10Hの文字番が出ていた。

「まさか?あ!炊いてある!」

どうやら勇一がおにぎりでも持って行ったのか、ちょっとだけ炊いてあるご飯が炊飯器に残っていた。まぁちょっととはいえ、お茶碗3杯はいけそうだ。

「でかした!勇一でかした!」

心が通じ合っていると思う瞬間が一番嬉しい。この人を選んで良かったと思う一瞬だ。そのまま、台所の袋系が詰まっているケースをあさり、例の美味しそうな振りかけを探し出した。

つづく

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