物語.54

ガサガサと一生懸命ふりかけを探している私は結構情けない姿かもしれない。しかし、今はどうでも良い。結構、誰もいないと人間雑になるものだ。

誰だって他人がいる時と、全く一目にさらされることが無い時であれば人格が違う。自然体、などといって、どんな時も変わらないナチュラルを気取っている人がいるが、あれは絶対に嘘だろう。

どんなに化学が進歩しても、誰にも見られていない一人の時なんて、誰にも知り得ることができない。

1人の時のことなんて、どうとでも言える。

あぁ…、ふりかけを探しながらまたどうでも良いことを考えてしまった。

私は自分のアホさ加減に幻滅しながら、例の物を探しだした。

“ぱらぱらめんたい”と表記されている、力の抜けたデザインが特徴のパッケージが癒される。“さっと溶けるからいろんな料理に料理にふりかけて!!”のキャッチコピーがこのふりかけの守備範囲の広さを物語っていた。

まぁ、ようするに明太子を乾燥させた粒状のふりかけと言ったところだろう。
確かにあまり、近状のスーパーなどでは見かけないちょっとした“レア感”は漂っている。

まぁ、とにかく食べてみないことには始まらない。表参道のオシャレな和食器店で購入した茶碗を取り出し、炊飯器の中の白飯をしゃもじでよそった。

私たちの好みは固めのご飯なので、勇一もご飯の炊き方だけはこだわっている。

炊いてから時間が経過しているものの、元々固めに炊いてあるので、ベチャっとせず丁度良い感じだ。早速、箱からふりかけを取り出すと黒い表情の長細い物体が表れた。

バリバリっと外の袋を外し、キャップを開けてご飯に振りかけてみた。

「あ、明太子の香り…」

パラパラとご飯にまぶされる乾燥明太子は、ご飯の暖かに溶け始め、ふわっとした美味しそうな香りを発した。

「よし、頂きます!」

まずは一口…。これは、美味しい。というか、程よい塩気とふりかけ独特の簡素感が絶妙なバランスで箸が止まらない。

「ええと…。もう一杯」

明太子味ほど米のお伴に良いものは無い。即1杯目のご飯は消化してしまい、2杯目に突入した。一応、冷蔵庫にほうじ茶のペットボトルがあったので、コップに注いで間接的に飲み進めた。

「はぁぁ…幸せ」

米ってこんなに美味しかったっけ。どうも、今日は日本人に生まれた自分の境遇に最高に賛辞を送りたい。

今日起こった出来事も、ぱらぱらめんたいのおかげでどうでも良くなった。というか、あれがあったからこそ美味しいのだ。むしろ感謝である。3杯目も片付けた私は、勇一と一緒に味わうために直ぐさま2合分のお米を研ぎ始めていた。

つづく

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