物語.55

アラームがウルさい。いつも起きれるように、やたら不快な音に設定しているだけあって、今日もバッチリ気分が悪い。しかし、目覚めることだけは間違いなく、鳴り止みそうもないスマートフォンを手探りで探した。

「ん…。ん?もう6時?」

おかしい。昨日は美味しい振りかけをかけてご飯を食べていたはずだ。布団の中には勇一がおり、恒例の腕枕をしてくれている。

どうやら、ホットカーペットにくるまってご飯を食べていたらあまりの気持ち良さに、爆睡してしまったようだ。

「やば…。しかも、ちゃんと布団に入ってるって…」

昨日は本当に疲れてしまっていたらしい。テーブルの上には勇一が食べたのであろうペヤングソース焼きそばの空ケースが置いてある。

そのとなりには…茶碗と明太子のふりかけ。おそらく、焼きそばにもちょっとだけかけたのだろう。それも、良いアレンジだ。私はこの一瞬でふりかけの守備範囲の広さに感心しながら、出勤の支度を始めた。

今日は昨日のこともあるが、これと言って本部からの連絡も無く平和に過ごせた。

「今週末さ。みんなで飲みに行かない?」

「週末?勇一に聞いてみなきゃわかんないけど、私は構わないわよ」

「じゃ決定ね」

もちろん、梶原君も呼ぶそうだ。というか、既に了承済みらしい。

「そういえば、東野君辞めたいみたいね」

「そうなの…。まぁ、ちょっとづつお店は暇にはなって来るけど、こう都合の良い人ってそうそういないの」

「確かにね…。就職活動中のフリーターって案外バイトに精を出してくれるものだからね」

様々な問題があったのだが、解決していないのがこの東野君の穴だ。ほぼ毎朝のように早番に入ってくれているので、かなり助かっている。

しかし、彼が抜けるとなると誰かに負担がいってしまい、お店の士気が下がってしまう可能性も潜んでいる。そもそも、私みたいに近所に住んでいる人であればいいのだが、いかんせん早朝に電車を乗り継いでくる願望のある人はいない。

「時給が早番だけ上げられた何か手の打ち用もあるんだけど…」

「それ無理でしょう。朝5時から7時までとかじゃなきゃね、それなら本部も配慮してくれそうだけどね」

「そんな時間だったら100%バイト来ないでしょ。ましてや冬の時期に」

「これって沙織がサービスで1時間早く来なきゃならないパターンね」

「うわぁ…。最悪、それだけは勘弁してほしい…」

店長だから人より多く働き、店を守るのは当然だ。しかし、私はあまりそういった責任感的なものが欠如しているらしく、かなり嫌な気分になった。

「とにかく沙織。求人だそう」

「勝手にして大丈夫かな?」

「そんなん、バイト募集でしょ?やらなきゃ潰れちゃうって」

由香はいつも適当だ。まぁ、確かに知り合いのツテには限界もあるだろうし、求人を出すしかなさそうだ。

その後、どんな人が来たら楽しいかを由香と無駄に想像しながら楽しんだ。

つづく

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