自宅で勇一に求人のことを相談すると思わぬ答えが帰ってきた。
「よく考えたらさ。沙織の店って何で早番2人必要なの?」
「だって、上でお店の用意する人でしょ。下の厨房で揚物を挙げる人って感じで絶対に2人必要なの」
「なるほどね。じゃあさ。変な話、朝からちょっとだけ下の厨房専門の人がいればいいてことか」
そうか。よく考えてみれば朝だけの厨房の人がいればいいだけだ。しかし、そんな短時間だけのためにバイトがやって来るのだろうか?
「ちょっと短過ぎるし、微妙じゃない?」
「いやいや…。だってコンビニを考えてみ。本業だけじゃ食っていけない人達が早朝バイトを3時間だけサクッとやって会社に出勤。よくある話だよ」
「そっか。そう言えば、そういう友達いた。そっか、ちゃんと仕事を持ってる人にやってもらえば良いんだ」
さすが勇一だ。これなら人件費も嵩まないし、私達も楽にできる。こんなアイデアは思いつかなかった。
「まぁさ。場所が微妙だから、人集めるのは楽じゃないだろうけどね。とにかく、募集してみなきゃ始まらないからやってみなよ」
「うん」
勇一はお気に入りの発泡酒を2本空け、3本目を冷蔵庫に取りに行った。
「そういえばさ。今日のシャケの西京漬美味しいね」
「ん?そうそう、今日さ帰りに渋谷のフードショーによったら激安だったんだよね」
「ごめんね。買ってきてもらって」
「どうせじゃ二人で楽しく美味しいもの食べたいだろ」
勇一は私を喜ばせる発言を連発させながら、テーブルに腰かけた。
「だってさ。5尾で500円だよ。このシャケ。1枚でみたらさ380円になっててさ。どうしちまったんだこの店は!?って思ったよ」
「そのお店の気持ちは分かるけど、安過ぎて普通の値段で買いたくなくなるね」
「絶対嫌だろ。何か…沙織と住んでから俺、最高にセコくなってるような気がするんだけどさ」
「いいことじゃん。無駄なお金は使わないにこしたことは無いし、後々苦しくなるのも嫌だしね」
「逞しいね…まぁ、嫁にしたらよさそうな感じだけどね」
「でしょ?ははは…」
今の発言はどう捉えるべきなのだろう…。結構、私達も微妙な時期と言えば時期で、こっちの方もナイーブな話題だ。
まぁ、深く考えて焦ると逃げられそうな気もするのでここでは感情を押し殺しておく。そんな私の気持ちを知ったてるの知らぬか勇一は、今日も腕枕をしてくれ、体を包んで一緒に寝てくれた。