食のグローバリゼーション 14

ボヘミアのビール醸造法がグローバル展開したピルスナー

~ チェコ プルゼニ ビール醸造博物館 2/2 ~

ビールの味を決める重要な工程は醸造工程だ。麦汁のもろみを濾過した後に、ホップや副材料を加えて煮沸する。ホップを加えることによって、ビールの濁りを抑えながら、ビールならではの香りと苦みをつける。煮沸することによって麦芽酵素の働きを調整し、麦汁の濃度を最適化する。

均質なビールを安定して醸造するには、醸造する麦汁の量や温度を一定の条件にコントロールする自動機が必要となる。19世紀のチェコ、プルゼニの醸造所では、小型のプラントのような醸造機が開発されている。より多くの人に、同じ味わいを届けたいという思いが、機械化の後押しをしたのだ。技術革新は近代のものではなく、産業革命以前から粛々と職人の生産活動の中で進んでいたわけだ。

濃縮された麦汁は、発酵工程に進み、酵母が加えられる。発酵に使用する酵母には、上面発酵酵母と下面発酵酵母があり、2つの異なるタイプのビールができあがる。スタウト、エールなどイギリス系のビールには上面発酵が採用されている。10度から20度で発酵し、豊かな香りのビールが完成する。

これに対し、プルゼニではサッカロマイセス・カールスベルゲンシスと呼ばれる下面発酵酵母が利用され、まろやかで切れ味のいいビールに仕上げる。5度から10度の低温で発酵させ、酵母は発酵が進むに従って底に沈んでいく。チェコや、ドイツ、日本をはじめとする世界各国で、生産されるラガータイプのビールは、下面発酵で作られている。

長い熟成期間を経て十分に熟成したビールは、シートフィルターや珪藻土濾過機による濾過によって、酵母粕や凝固物を除去する。これで、生ビールが完成する。さらに、温水シャワーで、液中の微生物を殺菌すると、ラガービールに変化する。

完成したビールは樽詰めされ、低温の貯蔵倉庫で出荷のときを待つ。いつでも需要に応じて出荷するためには、品質、味わいをキープしながら、保存することが重要となる。ビールが詰められた樽が、倉庫にぎっしり並ぶ光景を目に浮かべると、顔がほころんでしまう。

ビールの中では、基本的に微生物の繁殖が起こることはないが、微量のタンパク質が含まれるため、風味のバランスが崩れることがある。製造後早めに飲む方が美味しいのは当然だが、賞味期限は半年程度が限界と言われている。できるだけ3か月以内のフレッシュな味わいを楽しみたいところだ。

「とりあえずビール」でオーダーしたビールが、テーブルに並び、乾杯の声とともに宴は始まる。琥珀色で透明なビールの味わいを最終的に決めるのは液体と泡の割合だ。7対3の割合が理想的とされる。液面に浮かぶ泡が、ビールと空気が触れないように蓋の役割を果たし苦味を吸収する。適量の泡がまろやかな風味を作り、きめ細かい泡が爽やかな口当たりを作る。苦い味を好むビール党は、泡立たないようにグラスを傾けてビールを注ぐことになる。同じビールの味わい方にも、各々の人の個性があっていいだろう。

プルゼニのビール醸造博物館は、宴好きの人の格好の学習場所となっている。ビールの製法にも歴史がある。長い年月にわたる職人の工夫が、飲物生産と食に文化を添えてきたのだ。

プルゼニだけではなく、チェコのボヘミア地方の各地では様々なビール醸造法が開発された。プルゼニのノウハウが「ピルスナー」、カルロヴィヴァリのノウハウが「カールスバーグ」、チェスケー・ブディェヨヴィチェのノウハウが、「バドワイザー」の世界的なブランドを産んだ。正にチェコは、ビール愛飲家の故郷と言える国といえる。

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