物語.60

「なんかさ。インパクトあるデザインと言うか…。うん、早朝からおでんタネ挙げたい!って感じのデザインにしてよ」

今日の我が家の夕食は海鮮鍋だ。“帰りによったスーパーで安かったから”という理由で勇一は金目鯛を買ってきた。実際、魚を捌くのは得意ではなかったが、何となくネットで、魚.com的なハウツーサイトを見ながら頑張ったので大丈夫そうだ。

「んん…。しかし、このポン酢美味しいね。どこで買ったの?」

「でしょでしょ!?これね、馬路村ってとこの名産なんだって」

「あぁ。よくスーパーで見る、ちょっと高いやつね。買ったんだ」

「安くなってたからね」

「ふぅん…。で、デザインなんだけど。絵は入れるの?」

「そうね…。文字だけだとちょっとインパクト無いもんね」

「おでんの絵とかはダサ過ぎないかね」

「確かに…痛過ぎるわね」

なかなか良い案が出ないので、ぼーっとテレビを眺めていると新しいタブレット端末のCMが流れてきた。中心人物らしい人が、朝から晩まで全てタブレット1枚で生活をこなせるという、利便性の高さをアピールしている。

「何でも良いんだっけ?」

「ん?そうよ。まぁ、あまりにも邪念のこもった雰囲気のものとか、呪い文字で募集とかじゃなきゃ大丈夫でしょ」

「どういう募集だよそれ…。っていうかさ。タブレット使えば良いじゃん」

「ipad?」

「そうそう」

「まぁ、アリだとは思うけど、紙でいいんじゃない?」

「いや。動画がながせるじゃん」

「あぁ。そっか!」

「何となく働いてる姿とか作業の流れとかさ」

「まさか私たち?そんなんじゃダメでしょ」

「勿論、沙織達じゃなくて、超イケメンの外国人とかをモチーフにして」

「げ!それ笑えるけど、どうやってその人達調達すんの?」

「知り合いモデルのヤツがいてさ。そいつ、スペインと日本のハーフだから見た目
は良いよ」

「事務所とか大丈夫などそれ?」

「あいつじゃやってくれるでしょ。しかも彼女もモデルだしね」

「じゃ…早速メールして!」

「沙織の店のことなのに何故、俺がここまでしてるのよ…」「言い出しっぺでしょう?嫌なの?」

「もちろん嬉しいよ…。ちょっとまってね…」

勇一は渋々その“モデルの友達”に連絡を取り始めた。彼のナイスアイデアに私の頭の中では絵コンテが既に完成しかけている。

「あさっての夜なら二人とも良いってよ」

「じゃ、お店に来てもらおうかな」

「りょーかい」

思わぬところで面白いことになった。どんな仕上がりになるのか期待していた私は、結局興奮してこの日眠ることができなかった。

つづく

関連記事

アーカイブ

ページ上部へ戻る