物語.63

家に帰ると何やら勇一がソファに寝そべって本を読んでいた。

あまり本を読まない勇一だけに一体どうしたのだろう。

「ただいま!遅くなってごめんね。撮影無事に終わったよ」

「お?あぁ、終わった?2人とも大丈夫だった?」

「うん。さすがモデル!ってな感じだったよ」

「そっか。なら良かったよ」

勇一は何やらマニュアル本をまとめて読んでいいたようだ。」

「いやさ、会社に動画の編集ソフトがあるでしょ?新しいバージョンにしたら、良く分かんなくなってさ」

「それ、大丈夫?仕事できるの?」

「うん。まぁ、ちょっとした技が増えてたりするから、そこを極めようと思ってね」

勇一はいつでも好奇心旺盛だ。どんどん、自分の好きなことなら突き詰める。私とは、その辺りが若干違う。私なんて、ぶつかってみて分からなくなったら無視か人に聞いて解決という人だ。

そのため、マニュアルなんて生まれてこの方読んだことがない。

「凄いね。ご飯は?一応、お寿司貰ってきたから私はこれにするけど」

「お!寿司ね!食べるよ」「食べたの?」

「ペヤングだけね…。食べたら早速編集しようか」

テーブルには大きな丸皿に盛られた、貰い物の寿司が沢山並べられている。やはり、ちょっと時間がたっているのか、マグロがかなり美味しくない。ただ、腐っても鯛。寿司だけは臭くても口にどんどん入っていく。

「いや…、いいよね沙織。この仕事って寿司もらえるんだものね。最高においしいじゃん」

「たまたまだよ。近くに寿司店がなければ貰えないからね。売れちゃったりすれば特に」

「まぁ、貰えることには変わりないじゃん」

「まぁねぁ。って、言うか勇一店長すれば」

「それはいいや」

「どういう意味…」

勇一は笑いながらビールを飲んでいる。何故かは聞かなかったが、なんと今日は発泡酒では無い…。しっかりとした普通のビールだ。

「まずさ。何分ぐらいにするよ」

「長過ぎると絶対にダメだから…30秒CMぐらいかな?」

「音は?」

「音はダメでしょ絶対。一応普通の売り場だからね」

「お…。そりゃそうだね。でも軽くじゃ良いんじゃない?」

「まぁ、試してみてからダメじゃ音量0にする」

私たはガリさえ残さず、寿司をたいらげた後、デスクトップのMACの前に肩を寄せ合って座った。

つづく

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