食のグローバリゼーション 19

絶滅危惧種への登録で危ぶまれる日本の食文化

~ 日本料理 ひつまぶし ~

世の中の資源というのは、無限大ではない。現在、大量に掘り出される石油や鉱石は、いつかは枯渇する。天然の資源を消費することによって私たちの生活が成り立っているが、未来の生活スタイルはどのようになるだろう。科学技術の進歩によって代替材料が見出され、今以上に便利で快適な生活を送ることができるようになるのだろうか。

限られた資源として地球に眠る原材料は増えることはないが、生物は繁殖によって生命を維持し続ける。でも、環境の変化によって地球上から姿を消した生物は五万といることだろう。太古の昔には地球上を闊歩した恐竜は、今では化石によって知るのみだ。恐竜が絶滅した原因は謎とされているが、人間の存在がそれに関わることはなく、地球の環境変化によって種を保存できなかった。

ところが、人間が文明生活を送るようになって以来、人間が地球の姿を変えつつある。地下資源の採掘、森林の伐採、治水工事などによって地上の姿は大きく変わった。化石燃料の燃焼による地球の温暖化は、地球上を覆う海の姿を変えつつある。人間が快適に暮らせる環境は、他の生物にどのような影響を与えるのだろうか。人間の文明の歴史が、地球の生物の体系を大きく変えつつある。

2013年、土用の丑の日を目前に控えて、日本人にとっては辛い報道を聞くことになった。7月1日から5日まで、ロンドンで開催された国際自然保護連合IUCNの会議において、ニホンウナギを絶滅危惧種としてレッドリストに載せるかどうかの検討が始められることになった。まだ結論は出ておらず、レッドリストに「絶滅危惧種」として掲載されても法的な拘束力はない。でも、それによってワシントン条約で規制対象となると、ニホンウナギの売買は国際的に禁止される。古くは『万葉集』にさえ、夏バテ防止の食材として詠まれ、日本が育み続けた食文化が危機的な状況となっているのだ。

ニホンウナギの稚魚、シラスウナギの池入れ量は、2009年の28.9トンから2013年には12.6トンという半減を超える激減ぶりなのだ。このままのペースでウナギが減り続けると、日本の食卓からうなぎが消えることになってしまう。

日本は世界のウナギ生産量の70%以上を消費する世界最大のウナギ消費国だ。世界の食卓でウナギを見かけることはあまりない。中国の上海では、上海ウナギが名物料理となっているが、日本の料理方法とは大きく異なる。ウナギを輪切りにして生姜などの薬味と一緒に蒸したり、軽く炒めた後に醤油煮したりして食べられる。味は日本のうなぎ料理にひけをとらないものだが、骨が抜かれていないため食べにくいのが難点と言える。

うなぎ料理の最も食べやすい形は、ひつまぶしかもしれない。蒲焼きにしたうなぎを数ミリ幅に細切りにしたものをご飯の上にまぶす。うな重やうな丼を食べるときには、うなぎを箸で適当なサイズに切りながら食べることになるが、ひつまぶしではそのまま口に運ぶ。効率的に食事を済ますことができる。関東や関西のうなぎ屋ではあまり見かけないが、ウナギの養殖の本場、浜名湖周辺のうなぎ屋のメニューには必ず登場する。

様々な料理で味わえるうなぎだが、この日本の食文化を絶やさないためには、ウナギの保護が必要となるだろう。養殖が始まる前の日本のウナギは、赤道近くの太平洋から遥々泳ぎ着いたものだった。エネルギッシュに川を上る姿から、「うなぎのぼり」の言葉も生まれた。生態系を考えた人間の行為と、ウナギがもっている生命力で、日本の食文化が維持されることを望みたいものだ。

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