食のグローバリゼーション 21

透明のスープに茶色の麺が泳ぐサッパリ味の冷麺

~ 韓国料理 水冷麺ムルレンミョン ~

冬の寒い日には冷えきった体を温めるために、無性にラーメンを食べたくなることがしばしばある。熱々のスープが、冷えきった体を芯から暖めてくれるのだ。それとは逆に暑い夏になると、食欲が減退し、熱いものは敬遠されがちになる。素麺やもりそばなど、冷たくてあっさりした料理で済ませてしまうことが多くなる。でも、素麺やもりそばばかりでは味気なく物足りなさを感じるものだ。そんなときに思い浮かぶのが冷麺だ。

ラーメン屋や中華料理店での冷麺は、黄色い麺の上に、赤色のトマト、緑色のきゅうり、白色と黄色のゆで卵などが乗せられ、色彩的にもカラフルだ。鮮やかな色彩には、食欲を回復する効果がありそうだ。国内で一般的に知られる冷麺は、中華料理店などの夏の季節メニューとはなっているものの、中華料理ではなく紛れもない日本料理だ。中華麺を使うことから中華料理店のメニューに加えられてはいるが、本国の中国では見かけたことがない。

ところが陸続きで接する朝鮮半島には、数種類の冷麺がある。何故か気候的には寒い地域のはずの北朝鮮で、冷麺が発達したようだ。平壌(ピョンヤン)を中心とする地域ではムルレンミョン、咸興(ハムン)地方を中心としてビビンネンミョンが産まれた。両者の違いは、麺の種類とスープの有無にある。ムルレンミョンにはそば粉を主体とした麺が用いられ、ビビンネンミョンにはジャガイモやサツマイモのでんぷんを主体として作った麺が用いられる。また、ムルレンミョンでは麺がスープに浸かっているが、ビビンネンミョンの場合はスープが入ってないか、少しだけの場合が多く、唐辛子味噌のコチュジャンベースのタレを麺に和える形になっている。

日本の中華麺による冷麺は一般的には夏にしかお目にかかれないメニューだが、ムルレンミョン、ビビンネンミョンはともに、冷たい麺でありながら朝鮮半島のエリアで一年を通して食べられている。ムルレンミョンは、今では日本の焼肉屋などのメニューに加えられていることも多くなってきた。そば粉に含まれる酵素には、タンパク質や脂肪を分解する働きがあるとされ、焼肉を食べた後の締めのメニューとして高い人気をもっている。サッパリした味わいは、脂ぎった胃や腸をまろやかに落ち着かせてくれるように感じる。

ムルレンミョンのスープは一般的に、牛肉や鶏肉、キジ肉などでとった出汁に、大根の水キムチのトンチミを加えて作られる。店によっては、キジ肉の出汁にこだわり続ける店もある。基本のスープに、にんにく、しょうが、昆布のだし汁などを加えることによって、お店ならではの特徴をもったスープに仕上げられる。

具材には、薄切りの肉、大根キムチ、きゅうり、にんじん、ゆで卵などが用いられるが、極めてシンプルなレシピとなっている。キムチが入ってはいるが、特に辛い料理とはなっていない。麺には弾力性があるものの、中華麺に比べるとかなり硬めで、しっかりとした歯ごたえがある。透明に近いスープに、茶色の麺が泳ぐ姿は、見た目にも清涼感を与える。

このムルレンミョンを韓国で味わうには、ちょっとした作法がある。先ずは、出された料理をそのままの状態で一口食べる。その後、からしや酢を入れて、自分好みの味にして最後まで食べるのだ。これが料理をしてくれた人への気遣いということになるようだ。役割を分け合うことによって成り立つ社会では、マナーや道徳に従った行いをしなければならない。食事の仕方にも習慣が存在し、それによって食文化が育まれていると言うことができるのだ。

 

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