食のグローバリゼーション 23

熱帯のジャングルの地を這う蛇毒のエキスが溶け込む瓶詰めコブラのリカー

~ ラオス コブラ酒 ~

地球は赤道を中心として南北に特徴的な気候を示している。気象現象や地形によって、ユニークな植物や動物が育つ。他の地域では見られない特産物を食生活に取り入れると、その土地ならではの郷土料理が誕生する。世界各地には千差万別の食文化が育くまれている。地元の特産物は食材とされるばかりでななく、飲物用にも活用される。食と飲は密接に結びついている。

日本では主食として食べられる米から日本酒が産まれた。全国各地にその土地の米と水を使った銘酒が産まれ、日本人に愛され続けている。ヨーロッパに行けば、果物のブドウがワインへと姿を変える。空腹を満たすための食事ではあっても、料理を決める前に飲物を決める場合も珍しくはない。飲料は食によって乾いた喉を潤す以上の役割を担っているのだ。

通常、飲料を入れるボトルには、液体のみが入っている。液体だけが詰められたボトルからは、表示が無ければ原材料を判別することは難しい。これを逆手にとるかのように、表示をなくして原材料を封入するボトルが存在する。ラオスの首都、ヴィエンチャンのショッピングセンターに設置されたリカーコーナーのショーケースは衝撃的だ。強烈なインパクトを感じる。植物ではなく動物が、剥製のような状態で詰められたビンがずらりと並ぶ。

ラオスで一般的に飲まれているのは、ラオ・ラーオと呼ばれるお酒だ。現地のインディカ米から醸造された米焼酎だ。沖縄の泡盛の先祖だと言われることもある。ラオ・ラーオが、ラオスで標準的に飲まれるお酒だが、どこにでもスタンダードな味では飽き足らず、発展的な味を求める人がいるわけだ。ラオ・ラーオを基にして、熱帯地域にしか生息しない動物がつけ込まれている。

マムシ、ハブ、サソリ、ヤモリ、熊の手の他、コブラまである。動物がビン詰めされた様子を眺めていると、博物館の片隅の資料室にいるような錯覚に襲われる。ビンの中に詰め込まれた動物たちは、日頃人間に好かれる種類のものではない。滅多に食材とはならないだろう。それが、ラオ・ラーオの中で泳いでいるわけだ。日本でも沖縄地方に行くとハブ酒やマムシ酒を見かけることはあるが、バラエティーについては及びもつかないだろう。

熱帯のジャングルに住むコブラは毒蛇として人々に恐れられている。動物の神経の放電を妨げる神経毒を持っている。小さな動物であれば、コブラに噛まれるとひとたまりもない。即死して、コブラの餌食となってしまう。でも毒の成分は、タンパク質で構成されている。人間が口から摂取して消化器官に入った場合は、栄養素として吸収される。滋養強壮に効果があると言われることもある。そうは言っても、毒と言われれば口にするどころか、近寄ることさえ気味が悪い。しかも、鎌首をもたげた姿は毒蛇の威嚇のポーズだ。蛇に睨まれたカエルは、身をすくめて動かなくなってしまう。ところが、蛇の視線を気にすることなく喉を鳴らす人がいるのだ。

コブラ酒は熱帯地方でしか味わうことのできない希少価値のあるリカーだ。試飲レベルで一口味わってみたいという思いはあるが、残念ながらこれまでにその機会には恵まれていない。ボトルで持ち帰るには、それなりの勇気が必要になるだろう。ボトルで日本に持ち込んで首尾よく飲みほしたとしても、今の日本だとコブラ入りの瓶を一般家庭ごみとして捨てることなどできないだろう。ごみ収集所に、コブラ入りの瓶が転がっていると、近所は騒動にもなりかねない。でも、一度くらいは怖いもの見たさの好奇心で味わってみたいものだ。

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