食のグローバリゼーション 24

カラフルな色彩のパプリカが独特の風味を加えるピリ辛スープ

~ ハンガリー料理 グヤーシュ ~

野菜は植物の葉や、実、茎、根を利用しており、種類によって色彩が概ね決まっている。キャベツはハクサイなどの葉野菜を中心として緑色の野菜が多いが、ニンジンは橙色、ナスは紫色、じゃがいもは土色をしている。ピーマンの色は何色かと問われれば、大半の人は緑色と答えるだろう。ところが、スーパーなどで、ピーマンと同じような形をしながら、緑色でないものを見かけることがある。赤色、橙色、黄色、複数色が入り混じったものなど、とてもカラフルだ。彩りが変われば味も微妙に変化し、カラフルな色彩が食欲をそそるだろう。

緑色以外の色をしたピーマンは、パプリカと呼ばれている。ピーマンをグリーン・パプリカと呼ぶべきかどうかは別として、ベル型のピーマンの仲間は種類豊富なのだ。そればかりではない。ピーマンを縮小サイズにしていくと、徐々にシシトウやトウガラシに近づいていく。ピーマン、パプリカ、トウガラシ、シシトウなどの異なる名称がついた食材には、実は明確な定義づけがあるわけではない。植物学的に分類すれば、どれも同じ仲間なのだ。

パプリカに品種改良を加え、バラエティー豊かな食材としたのは、中央アジアからヨーロッパに移り住んだマジャールの人々だ。様々な工夫を凝らしながら辛さに変化を加えただけではなく、視覚的にも彩り鮮やかなパプリカを創り出した。ハンガリーは国をあげてパプリカの生産保護し、世界一のパプリカ生産量を誇るようになった。日本にも大量に輸出されており、粉末状の赤パプリカは、サラダにかけるとピリ辛風味を添えてくれる。

パプリカは、ハンガリーで最も大切な食材の一つであり、パプリカを抜きにしてハンガリー料理を語ることはできない。刺激的な味わいの少ないヨーロッパの中にあって、ピリ辛風味のハンガリー料理は比較的珍しいと言えるだろう。このピリ辛風味を産み出しているものがパプリカなのだ。ハンガリー料理で最もポピュラーとなっているグヤーシュでも、その風味が遺憾なく発揮されている。

グヤーシュは、牛肉やタマネギ、ジャガイモ、ニンジンなどを具材とし、赤パプリカで風味を加えたスープだ。具材の種類や量が多い場合は、スープと言うよりシチューと呼ぶ方が適切だろう。一言でグヤーシュと言っても、地方や、家庭、レストランによって数限りないレシピが存在する。ソーセージや、目玉焼き、ピクルス、パスタ類、サワークリームなどを加えた変わり種もある。

グヤーシュは元々、農民達の野外の昼食であった。放牧や農作業をする合間の昼食のために、わざわざ時間をかけて自宅に戻る手間を省くため、畑や牧場の近くに大鍋を用意し、様々な具材を煮込んで昼食としたことが起源だ。爽やかな風が吹き抜ける自然の中での食事は、開放的でより美味しく感じられることだろう。現在でもハンガリーの農村では、伝統的なスタイルでグヤーシュを味わう光景に出会うことがある。

ハンガリーの農民の料理は国境を越えて、南ドイツやオーストリアにも伝わった。今ではウィーンのレストランのメニューのスープ欄の一番上に、グヤーシュが登場することも多い。多国籍料理であるはずのグヤーシュがあたかも自国籍料理となり、当たり前のように市民の食生活に根付いている。ハンガリー料理のグヤーシュがグローバル化したわけだ。

具材の量を調節すれば、昼食ならばグヤーシュ一品で充分だし、夕食でもメインディッシュとなりえる。バラエティー豊富なレシピを追い求めれば、毎日のメインディッシュの献立がグヤーシュでも飽きることはない。

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