食のグローバリゼーション 25

壷釜のタンドールでスパイシーに焼き上げられた鶏肉

~ インド料理 タンドリーチキン ~

鶏肉は世界中で食べられる最もポピュラーな食材と言っても過言ではないだろう。全く動物を口にしないベジタリアンは別として、宗教的なタブーがない。料理方法も、煮たり、蒸したり、焼いたり、あらゆる方法で料理される。世界各国に独特の鶏料理が存在する。その中でも焼鳥は最も手軽な料理だ。

日本の繁華街には必ず焼鳥屋があり、サラリーマンにとって格好のオアシスとなっている。軽く喉を潤すには最適と言える。焼鳥屋では一口大に切った鶏肉が数個串に刺され、コンロの上で何度も裏返しながら、じゅうじゅう焼き上げられている。加熱用の材料にもこだわりをもち、備長炭による炭火焼きを看板に掲げる店もある。串刺しにされた焼鳥は食べやすくて美味しい。好みに応じて、塩コショウと、タレの二種類で味わうことができる。

海を越えて東南アジア地域に行くと、インドネシアにはサテ・アヤム、タイにはガイ・ヤーンと呼ばれる定番の料理がある。タレやスパイスなどの味つけに違いはあるが、見た目には日本の焼鳥とほとんど変わらない。さらに西に足を進めると、インドにも特徴的な焼鳥料理がある。タンドリーチキンは、彩りが大きく異なり鮮やかな赤い色をしている。

日本の焼鳥は焼く前に下味をつけることはあまりないが、タンドリーチキンの味の決め手は入念な下ごしらえにある。ウコンなどの様々なスパイスに、塩、コショウ、食紅を加えたヨーグルトのマリネードに、一晩しっかりとつけこむのだ。各種のスパイスが鶏肉に独特の風味を加え、食紅が鮮やかな赤色で鶏肉を包み込むことになる。

下味のついた鶏肉は、串に刺してタンドールと呼ばれるオーブンで焼かれる。タンドールはインド独特の調理器具で、壷のような形をした窯だ。土で作った台の中に素焼きの大きな甕を嵌め込み、甕の外側から熱を加え、食材を甕の中で蒸し焼きにする。インド人にとっての主食のパンにあたるナンやチャパティ、ロティなどは、タンドールの甕の側面に貼りつけて焼く。

タンドリーチキンは、串刺しされた鶏肉を甕の中に吊るして蒸し焼きにする。長い串をタンドールの中に入れる料理人の仕草は豪快に見える。側面には入れたばかりのナンの生地や、焼き上がる直前の膨らんだナンが貼りついた甕の中央に、串を差し込むのだ。

タンドールを加熱する燃料としては、牛の糞が用いられることが多い。調理に動物の糞を使うということに若干首を傾げてしまうが、草食動物である牛の糞は悪臭を放つことはないという。インドの街角では牛の糞を拾い集める人の姿をしばしば見かける。原価ゼロの燃料は極めて経済的だ。ヒンドゥー教の世界観では牛は神聖な動物として崇められており、インドでは人間と牛が密着し、見事に共存しているわけだ。

ヨーグルトにつけ込まれた鶏肉は柔らみを増し、タンドールの中で吊るして焼かれるため、脂分が適度に取り除かれる。焼き上がったタンドリーチキンは串から抜かれ、日本の焼鳥のように串刺しの状態で食べることはない。骨つきであるため少し食べにくいかもしれないが、ガブッとかぶりついた瞬間には、香ばしいスパイスの香りが口の中に広がる。焼く前に骨を取り除いたチキンティッカも、ほぼ同じ味わいを楽しむことができる。

世界各国には多種多様の鶏料理があるが、その中でもタンドリーチキンはトップクラスにあげることができるだろう。日本の焼鳥に飽きたら、インド料理のレストランに行って、タンドリーチキンを味わうのもいいのではないだろうか。同じ食材で全く異なる味覚を体験することができる。

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