物語.68

「それ面白いじゃん!いっちゃおうよ!」

由香を誘ったらこうなると思った。間違えなく問題があったらズバズバ言ってしまうタイプの由香は、中川さんを地獄へ落とし込む可能性がある。

とはいえ、勇一と行くのは悪いし、1人では絶対にいけない。

他の友人も久々に出会ったのに、こんな感じで食事はしたくないだろう。

「でもさ。こういった所でアルバイトするって結構キツいんじゃない?全く儲かってないのかしら…」

「良い人なんだけどねぇ…」

「ま、とにかく食べてみなけりゃ分からないって!楽しみ楽しみ!何着てこうかなっと」

他人の不幸は蜜の味…。由香を見ていると、本当にそのことわざの意味が分かるような気がする。その日、マンションに帰ると勇一が面白い話しをしてくれた。

「なぁ。センスあるってさ。どういうことだと思う?」

「センス…?ん…そうだな。そういうのって無意識に感じることだからさ。いざ説明しろって言われるとわかんないよね」

「だろ?俺もさ…。いや、今日ね、新しい人が転職で来てさ。すっごく良い人なんだよ。でもなぁ…何かセンスが無いっていうか」

「仕事ができないの?」

「いや、普通にこなすことは出来そうだけどね。さりげに、こうセンスが無いんだよね」

「んん…。デザインの素質が無い?」

「まぁ、無い訳ではないんだろうけどね。こう、違うんだよ。何かね」

そうか。やっぱり、何をするにもセンスってのが必要なのか。ん…。まてよ。中川さんってそのセンスが問題なのかな?

「ん?沙織どうした?」

「え?いや…。今日ね…」

私はとにかく今日あったことを勇一に話してみた。

「それさ。俺も行って良い?絶対見抜けるって」

「でも…、せっかく食べにいくなら楽しく食べたいよ」

「いいじゃん。もしかしたら超旨いかもしれないだろ?」

「まぁ…。そうだけどさ」

「決まりだな」

結果的に勇一も行くことになるとは…。まぁ、でもこのセンス。

何か中川さんと繋がるような気もする。不安な気分だったが、何だか勇ましい気持ちになってきた。明日の中川さんを要チェックして、戦場に乗り込むことにしよう。

つづく

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