食のグローバリゼーション 30

爽やかな潮風、水平線に沈む夕陽、新鮮なシーフードが、最高度に演出するディナー

~ インドネシア バリ島 ジンバラン・ビーチ・レストラン ~

日本の食文化の中に、口や舌で味わうばかりではなく、目で味わうという習慣がある。料理の味覚に加えて、視覚的な味わいを楽しむとことで風流な食文化を育む。見栄えよく盛り付けられると、箸を伸ばすことによって整った形が崩れることにもなるが、食が進むに従って変わる形を楽しむことができる。食卓の上から少し視線をあげると、食卓を囲む環境や風景も視覚的な味わいを産み出すことがある。

緑や花に包まれる田園風景の中での食事は、のどかなものとなるだろう。また、潮風に吹かれながらビーチでの食事も、食の環境として最高の場面となりえる。インドネシアのバリ島のジンバランには、広々とした浜辺に数多くのレストランが並んでいる。バリ島の最南部バドゥン半島の入口に位置するジンバランの街の西側には、ジンバラン湾に面して広々としたビーチが広がる。

日本でも熱帯の観光地として高い人気をもつバリ島は、年々観光開発が進められた。サヌールやクタ、ヌサドゥアなどのビーチが急速にリゾート地として生まれ変わった。これらのリゾート地には大型で近代的なホテルが建ち並び、一年を通して数多くの観光客が訪れている。ビーチをのんびりと歩けば爽やかな潮風を感じることができ、自然と親しむことはできるのだが、視線を陸側に移せば近代的な建物が建ち並ぶ都市となってしまった。

観光開発のエリアはさらに拡大しジンバランのビーチにも、フォーシーズンズ、リッツカールトン、インターコンチネンタルなどの高級リゾートホテルが進出してきた。でも、ジンバランは他のエリアに比べ開発が遅れているため、まだ素朴な景観を保っている。ジンバラン湾を中心として、今でものどかな漁村の風景が広がる。

ビーチの北端には魚市場があり、水揚げされたばかりの新鮮な魚介類がずらりと並んでいる。市場の中は地元や近郊のホテルやレストランから旬の食材を求める大勢の人々で賑わい、漁村特有の活気が漲る。

市場から続くビーチには、イカン・バカールまたはジンバラン・カフェと呼ばれるビーチ・レストランが軒を連ねている。どのイカン・バカールも、波打ち際のビーチにテーブルを並べ、獲れたばかりの海産物のバーベキュー料理を楽しむことができる。各店のエリアが不明確なため、ビーチ全体が一つのバーベキュー広場のように見える。

イカン・バカールで食事をする人は先ず、調理場の横で水槽やトレイの中の魚介類の品定めをする。見渡す限りの魚介類の中から、料理をしてもらう魚介類を選ぶのだ。悩みはつきないながらも一品を選び、料理方法とともに店の人に告げる。これでディナーのメニューが確定するのだ。浜辺のテーブルに移動し料理を待つ時間には、時の経過とともに期待感が膨らんでいく。

浜辺でのシーフードだから料理の味に間違いはない。でも、ジンバランでの食事の魅力は、これだけで留まらない。日没の時刻にはビーチの彼方、バリ海峡の水平線にゆっくりと夕陽が沈んでいくのだ。予め時間をカウントし、陽が沈む前にメニューと席を決め、西の空が赤くなり始めたタイミングで食事を始めるのが最高のプランニングと言える。西の空が赤く色づき始め、ゆっくりとした時間の流れに沿って目の前のシーンは幻想的に変化し、最終的には海面に帯を残しつつ水平線から姿を消す。

新鮮な爽やかな潮風、シーフード、絶景の夕陽が、ディナーの雰囲気を最高度に演出してくれる。ジンバランのイカン・バカールでは、極上のディナーを体験することができる。

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