物語.70

中川さんのお店に行く前日。私は部屋のウロウロしていた。

「沙織?どうかしたの?」

「ううん。別にどうだってことは無いなんだけどね…」

勇一が挙動不審な私に声をかけてきた。近頃、インターネットではお店が美味しいと家マズいとか、口コミを総合評価して点数をつけているサイトが増加している。

お店側にとっては非常に不服なこともあるだろうが、前情報無しでお店に突入した結果、大失敗して高い金額をドブに捨てる、という失敗は回避できる。

当然のように私の店舗も何となく掲載されており、中途半端な評価がつけられている。ただ“美味しい老舗のおでん種やさん”“ちょっぴりデパート価格”など、まぁ当たり障りない評価となっており、私への批判の言葉は特に無かった。

「実はさ、中川さんのお店を食べログで見てみようと思って」

「へ?そんなこと悩んでんの?見ればいいじゃん」

「いや…だってさ、先入観を持って行ってしまったら、正当な評価ができなくなりそうだし…」

「真面目だね。でも、いいんじゃない?別に。実は美味しいけど、活気が無いとかぐらいの評価だったら伝えやすいじゃん」

「そうかな?何か見てはいけないような気がするんだよね…」

「何気にしてんの。ハッキリ言ってあげるのも店長の役目だよ」

そう言うと勇一は半ば強引にパソコンを開き、早速検索をかけはじめた。

「そういや、お店の名前って?」

「トラットリア・ガワナカだよ」

「オッケー」

あれ?勇一の反応が薄い。お店ではあんなに盛り上がったのに!こういった身内ネタって、やっぱり現場の人で無いと100%楽しめないのかもしれない…。中川さんのお店の評価というより、そちらの理由で少し寂しくなった。

「お、出た出た…。げ…1.89ポイントだ」

食べログでの評価ポイントでは3.5ポイントあれば、取り敢えず間違えは無いお店として認識されている。そして、4以上はレジェンド級、2,1は非常に難ありという暗黙のルールで運営されている。

「それ、低過ぎない?あんまり例を見ないわね」

「ちょっと口コミを見てみよう」

ここでの口コミとは実際にお店に足を運んだユーザーが感想を踏まえて、評価を文章にしているものだ。

「何々?オーナー夫婦が無理矢理高級ワインを空けてしまい、会計が恐ろしいことになった。揉めるのは嫌なのでカードで支払いました…2度と行きません」

「こっちは?ええと…。奥さんらしき人が、近所のスーパーで購入してきたらしき豚肉をメイン料理にしていた…。レンジの音も店内に鳴り響き一体何が起こっているのか理解できなかった…」

つづく

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