アジアの遺跡に見る時空を超えたアート 48

鮮やかなピンク色の外観から暖かさが滲み、数多くの人々をひきつける教会

~ ヴェトナム ホーチミン タン・ディン教会 ~

日本は明治維新を契機として、欧米化の道を歩み続けている。様々な技術を輸入しながら産業の振興を進め、急速な近代化を果たした。周辺のアジア諸国もどんどん欧米化を推し進めている。産業が発達することが必ずしも、人間に豊かな生活を約束するわけではないが、より便利に、より快適にという思いが、街の近代化を後押ししているのだろう。

ヴェトナムは、19世紀から20世紀にかけて、フランスの植民地支配を受けたこともあり、フランスの影響を色濃く受けた。植民地時代には、次々にヨーロッパのキリスト教文化がもたらされ、国内のキリスト教信者は増加の一途を辿った。現在では、キリスト教信者数は800万人を超えるまでとなり、全人口の10パーセントを上回っている。ヴェトナムはアジア地域では、屈指のキリスト教信者が暮らす国となっている。

ヴェトナムにキリスト教が伝わったのは1533年頃のこととされている。ポルトガルからヴェトナム北部のナムディン省に訪れた宣教師が布教を始めたのだ。1615年には、中部の古い港町、ホイアンにヴェトナムでは初めてとなる伝導教会が設立された。その後、キリスト教会の建設は、北部、南部の各地に広まった。各々の教会では、医療や教育などの活動が行われ、貧しい人々の間にキリスト教が広まっていったのだ。

現在のヴェトナムで使われているクォック・グーと呼ばれるローマ字に似た表記は、1624年にヴェトナムにやって来たフランス人宣教師のアレクサンドル・ドゥ・ロードによって、キリスト教の布教を目的に考案されたものだ。

全国各地に続々とキリスト教会が建設される中、南ヴェトナムの中心都市、ホーチミンにも数多くのキリスト教会が建築された。街の中心部には、サイゴン教会、聖母マリア教会が堂々とした姿で建っている。そればかりでなく、市街地や郊外にも大小様々な教会が点在している。

ホーチミン市街からハイバーチュン通りを北に向かうと一際目を引く教会の姿が目にとまる。鮮やかなピンク色の塔が、青空に向かってまっすぐに聳える。タン・ディン教会は、キリスト教信者でなくても自然と引きつけられてしまいそうな外観をもっている。建築の様式は紛れもなくローマ・カトリックの様式だが、色彩は極めて特徴的で、アーティスティックだ。20世紀初頭のフランス領時代に、フランス人によってデザインされた建造物だ。

地味な色合いの宗教施設が多い中、鮮やかな彩りの教会は極めて珍しい。このままディズニーランドの中に移設すれば、きっと子ども達の人気スポットになることだろう。本家のヨーロッパでも、ピンク色の外観をもった教会を見かけたことはない。教会の目的がキリスト教の布教であることを考えると、誰もが気軽に立ち寄れるような景観をもっている方がよいと言えるのかもしれない。

ピンク色の壁には、白色の窓や装飾が施されている。親しみ溢れる2つの色彩が、穏やかな色のハーモニーを築き上げている。建物のデザインに引かれて聖堂に入ると、そこは祈りの空間だ。中央には、大理石を使った崇高な祭壇が設けられている。この大理石は、1926年にイタリアから持ち込まれたものだと言う。毎日、周辺に暮らす人々が訪れ、真剣な表情で祈りを捧げている。敷地内の祠には、愛しみ深いマリアの像が立ち、自然の緑と季節の花が彩りを添えている。

ホーチミンは、東南アジア地域では珍しく、キリスト教の文化が深く浸透し、特徴的な教会が数多く建つ魅力的な街と言えそうだ。

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