食のグローバリゼーション 31

味覚、視覚、聴覚、触覚、嗅覚の五感の全てを魅了する浜辺のディナー

~ インドネシア バリ島 ジンバラン・ビーチ・レストラン 2/2 ~

インドネシア、バリ島の最南部バドゥン半島の入口に位置するジンバランは、ゆったりとした時間が流れる漁村だ。夕方、日没前になると街をそぞろ歩く人が徐々に増えてくる。浜辺には、イカン・バカールまたはジンバラン・カフェと呼ばれるビーチ・レストランが軒を連ね、ここで食事をしようというのだ。どのイカン・バカールも、波打ち際のビーチにテーブルを並べ、獲れたばかりの海産物のバーベキュー料理を楽しむことができる。

レストランの店先には、バラエティー豊富な魚介類が並ぶ。その中から料理してもらう魚介類を選ぶのだ。水槽やプールで元気に泳ぐ魚、トレイの中でごそごそと音をたてるカニやエビなど、あらゆる種類の海の幸が勢揃いしているので、品定めをするのはなかなか難しい。どれもこれも味わってみたいものばかりだ。

様々な魚介類の中には、ロブスターも登場する。50センチ近くの大きなロブスターもいる。ロブスターというとレッドロブスターのような赤色のものを連想するが、それはグリルした後の色合いで、ジンバランのレストランの店頭には、緑色がかった色のものが数多く見かけられる。地味な色合いでありながら、自然に生きる動物のアートを感じさせてくれる。湿り気を帯びた体に太陽の光が反射すると、甲殻が備える色のコントラストが際立つ。

ロブスターは、日本では簡単に口にすることはできない。他の食材に比べれば幾分高価だが、ジンバランでは日本とは比較にならないような経済的な値段だ。しかも近くの海で獲れたばかりの新鮮さだ。思い切って、大きく太ったロブスターに決める。料理方法は、単純なグリルとすれば、食材そのものの味わいを体験することができるだろう。ココナツの殻によってグリルされたシーフードは、究極の自然食と言えるかもしれない。

店先でのオーダーが決まると、調理場を横目に店を通り抜けビーチに出る。浜辺に並べられたテーブルの椅子に腰掛けて、料理の登場を待つ。調理に多少の時間がかかっても、爽やかな潮風を感じながらビールで喉を潤していると、待ち時間が苦痛に感じることはない。むしろ期待が膨らむ一方だ。そして、グリルされたロブスターがテーブルに届く。店先では緑色をしていたロブスターは全体が鮮やかな赤色に彩りを変えている。

赤色の甲殻の中には白くて柔らかな身がぎっしりと詰まっている。程よくグリルされた身は引き締まり、簡単に剥すことができる。レモンを絞り、特製の甘酸っぱいソースにつけて、口に入れるとプリプリとした食感がたまらない。柔らかくて仄かな甘さが口の中に広がる。新鮮な食材ならではの味わいだ。

少しずつ食を進めていく内に海の彼方の太陽の高度が下がっていく。日頃地球の自転など意識することなどないのだが、太陽が移動する速さに、改めて地球の自転が感じられる。暫く太陽の動きを眺めていると、地球の自転の速度は意外と速いことに気づかされる。水平線に沈む夕陽を眺めながらのディナーは、満足度100パーセントだ。夕陽の姿が視界から消えてしまうと、もの悲しさが感じられる。真っ暗な海岸線を眺めても、視界に捉えられるものは何もない。ところが、次には浜辺に打ち寄せる波の音が食事の雰囲気を盛り上げてくれる。

新鮮なシーフードに、夕陽の風景、浜辺に打ち寄せる波の音が、味覚、視覚、聴覚を魅了する。プリプリの身の触覚、焼きたてのロブスターの香りによる嗅覚を加えれば、五感の全てが心地よく刺激されるパーフェクトなディナーとなる。

関連記事

アーカイブ

ページ上部へ戻る