食のグローバリゼーション 32

食べる場面に合わせてバラエティー豊富な具材と生地を選ぶ惣菜パン

~ ロシア料理 ピロシキ ~

日本人の食生活の基本は、朝食、昼食、夕食の3回の食事だ。一日24時間の中の3回の食事では物足らず、どこかに間食を加える人も数多くいる。おやつやティータイムの茶菓子には、食事とは異なる味わいをもったものも多い。食事よりも間食に食の重点を置いている人だっていることだろう。そのような人の欲求を満足するために、ケーキやチョコレートなどのお菓子が発達した。

レストランのシェフ、お菓子屋のパティシエは、同じ食文化を支える地平に立ちながら、食事と間食の場面が豊かになるように、各々の立場で工夫を凝らしてきた。身の周りにある無尽蔵の食材は職人が腕を奮った食べ物に変身し、レストランの食卓やティールームのテーブルに運ばれる。

ロシア料理として広く知られるピロシキは、夕食などのメインディッシュになるばかりでなく、間食として食べられることもある、食の場面を選ばないオールマイティーな食べ物と言える。日本で似通った食べ物を探してみると、菓子パンということになるだろうか。ところが、バラエティー豊かさはピロシキには遥かに及ばない。生地と具材の組合せを変えれば、無数の種類のピロシキが誕生していくのだ。ロシアではレストランのメニューに並ぶだけではなく街角の屋台でも、できたてのピロシキが売られており、屋台の近くで熱々のピロシキを頬張る子どもの姿をしばしば見かけものる。

ピロシキは、小さな「ピローグ」という意味をもっている。「ピローグ」は、ロシア語で宴会を意味する「ピル」から派生した言葉だ。きっと、ロシア人に愛されるアルコール度数の高いリカー、ウォッカとともに食べられることもあるのだろう。

ピロシキの生地には、鶏卵やバターを使ったパン生地をはじめ、折りパイ生地、練りパイ生地などがある。最も一般的なパン生地は、強力粉、ドライイースト、砂糖、粗塩、溶き卵に、人肌くらいに温めた牛乳を加え、これにバターを練り合わせ、約28度で発酵させることによってできる。1時間近く発酵させれば、ふっくらと2倍近くの大きさに膨む。

生地の中に入れる具材はさらに多種多様だ。挽肉やレバーなどの肉類を使ったり、サケ、チョウザメ、コクチマスなどの魚類を使ったりする。これに、ゆで卵、フレッシュチーズ、米、カーシャ、ジャガイモ、キノコ、キャベツなどが加えられ、多彩な味わいが産み出される。甘いジャムや果物を具材として詰めたピロシキもあり、茶菓子や子どものおやつとして食べられている。生地と具材の種類は無尽蔵で、レストランや家庭で独自の工夫が凝らされ、レシピがどんどん進化していく。

食べる場面や目的に合わせて具材を選び、パン生地に包んでオーブンで焼くか、150度前後の低めの温度の油で揚げればピロシキが完成する。日本で人気のあるカレーパンは、ピロシキをヒントにして作られたと言われることもある。

できあがったばかりのピロシキはホクホクだ。ふわふわの生地の中には、一体どのような具材が詰まっているのか楽しみになる。火傷をしないように気をつけながら、半分に割ってみる。すると、生地の中から、たっぷりと詰まった具材がこぼれ落ちてくる。一切れ口に運ぶと、パン生地の食感と具材の味や暖かさが、絶妙のバランスで口いっぱいに広がる。

種類の異なるピロシキをオーダーすれば、味の変化を楽しむことができる。ボルシチを飲物として数種類のピロシキを味わえば、ピロシキ一品でも充分一食賄えるだろう。ピロシキはロシア料理のレストランに行けば、どうしても味わいたくなる一品だ。

 

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