食のグローバリゼーション 33

バラエティー豊富な食材とトルコ独自の料理方法が一皿に凝縮する前菜

~ トルコ料理 メゼ ~

一流シェフがいるレストランでフルコースのディナーを味わうというのは、食生活の中でも最も贅沢で、夢に満ち溢れた場面だ。でも、毎日レストランでフルコースなんて食べられる人なんて、世の中にいないだろう。一生の夢で終わってしまう人の方が多いのではないだろうか。

シェフが全てのバランスを考えて考えるフルコースを食べなくても、ほとんどの人は食べるメニューの順番をアレンジしており、実は独自のフルコースを完成させていることが多い。今日の夕食にはステーキを食べたいと思っても、テーブルにつくなりステーキを食べ始め、最後の瞬間までステーキを食べる人などまずいないだろう。いくら好きな料理であっても、同じ物ばかりを食べていると飽きがきてしまうものだ。

メインディッシュの前には、先ずは軽い前菜が必要だろう。イタリア料理ならばアンティパスト、フランス料理ならばオードブル、英語圏ならアペタイザーと呼ばれる。そして、トルコ料理の場合には、メゼからスタートする。

メインディッシュを待つ前菜は、軽くて量も控え目であるべきだ。ほどほどに食べて、縮んでいた胃袋を少し膨らませ、メインディッシュの到来を待ちたいところだ。ところが、トルコ料理のメゼは、あまりのバラエティーの豊富さに驚かされてしまう。小食の人であれば食欲増進を図るどころか、メゼ一品で胃袋は一杯になってしまいそうだ。

トルコ料理の前菜は一般的にメゼと呼ばれるが、冷菜をメゼ、温菜をアラ・スジャックとして区別しているレストランもある。トルコ人の中には、前菜で2段階のステップを踏み、メゼの後にアラ・スジャックを食べてから、メインディッシュへと向かう人だっている。2ステップの前菜から始めるボリューム感たっぷりのフルコースには、かなり大きな胃袋が必要だ。

羊をメインとする各種のチーズ、ひよこ豆にゴマやニンニクを加え、オリ-ブオイルとレモン汁で和えてペースト状にした「フムス」、トマトやキュウリのトウガラシペーストの「エズメ」、ニンジンやナスのヨーグルト和え、などは軽めのメゼのメニューだ。

前菜としては少し重めのメニューと言えるのが、「ドルマ」と呼ばれるピラフを様々なものに詰めた料理だ。代表的なものに、ムール貝のドルマ「ミディエ・ドルマス」、ピーマンのドルマ「ビベル・ドルマス」、ブドウの葉のドルマ「ヤブラック・ドルマス」などがある。

これに、アーティチョークのオリーブオイル冷製「ゼイティンヤール・エンギナール」や、インゲン豆をオリーブオイルで炒め煮にしたピラキの「ファスリエ・ピラキ」などが揃えば、日本の一般家庭の夕食メニューに引けを取らない一皿が完成する。

一つの皿に多種多様の料理が並んでいるので、いつもどれから食べればいいのか迷ってしまう。ペースト状のものが多いので、各々ひとつまみ試食をするような雰囲気でフォークを運ばせる。盛りつけが構図的にも色彩的にもアートになっていることが多く、バランスを崩したくなくという思いも、食のスピードを鈍らせてしまう。視覚的なバランスを保ちながら、ゆっくりと食を進めるのがトルコ料理のメゼの味わい方の秘訣と言えるかもしれない。

前菜でありながらもバラエティーに富んだ食材と料理方法が凝縮しており、メゼの中にも前菜と主菜があるように感じられる。オリーブオイルペースト、トウガラシペースト、ヨーグルトペーストを、皿の外周との間隔を維持しながら順番に味わい、そして最後に「ドルマ」を片付ければ、次のメインディッシュへの方向感が生まれる。

 


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