食のグローバリゼーション 35

隅田川の両岸に広がる風景を眺めながら味わう江戸の小粋な夕食

~ 日本料理 隅田川屋形船 2 ~

乗物に乗って窓越しの景色を眺めながらの食事には、様々な楽しみに満ち溢れる。食の楽しみに、旅の楽しみが加わる。乗物が移動するに従って、風景が変わり旅情を感じることができる。中でも東京の東部を流れる隅田川の屋形船での食事は、江戸時代の大名気分を彷彿とさせるものがある。江戸時代から様々な出来事の舞台となったエリアには、歴史的なロマンが溢れる。

屋形船には屋根つきの座敷席が設けられ、数十人集まれば屋形船を一つの貸切ることができる。貸切り船は、グループ専用の動く宴会場となる。街の中のレストランや居酒屋では体験できない、ユニークな宴席を設けることができるわけだ。船を一艘借りるだけの人数が集まらなくても、乗合船を利用しての周遊が可能だ。乗合船の場合はグループごとに衝立で仕切られ、他のグループの人たちに気を使う必要はない。窓の先には隅田川の景色が広がるため、座敷席には解放感が漂う。屋根の上にオープンデッキを設けた船もあり、隅田川の川面を吹き抜ける爽やかな風を感じることもできる。

現在では船宿や料理屋など、約35の屋形船事業者が各々の特徴を活かした屋形船を運航している。隅田川に架かる数々の橋の袂や、浅草橋、浜松町、品川、深川、月島などの船着き場から船が出港すれば、小さな江戸の船旅が始まる。

浅草橋を出港した屋形船は、神田川から隅田川に入り、東京湾の河口付近へと船首を向ける。両国橋、清洲橋、永代橋を潜り、月島と越中島の間を抜けて晴海埠頭から東京湾へと出る。レインボーブリッジを超えると、目の前にはお台場海浜公園が広がる。ここで一旦碇を降ろし、レインボーブリッジやお台場海浜公園がライトアップされた姿をのんびりと眺める。湾内には、数多くの屋形船が水面に浮かび、提灯の燈火を水面に映し出している。近代的な建築物を照らす照明と屋形船の提灯の燈火が、絶妙の色のハーモニーを作り上げる。

数十分間、東京湾の色絵巻を楽しんだ後は、船首を隅田川の上流に向ける。勝鬨橋、佃大橋を潜りながら月島と築地の間を抜け、川の流れに逆らいながら北上する。両国橋を超え続けて、蔵前橋、厩橋、駒形橋、吾妻橋、言問橋、桜橋などの橋を潜り抜けていく。橋の下を通る度に船内は歓声が湧き上がる。川に架かる橋は両岸に暮らす人々を繋ぎ、数々のドラマが産まれ、思い出が作り上げられるのだ。

長い歴史をもった浅草の近くの吾妻橋と言問橋の間には、東京の新しい観光名所の東京スカイツリーが聳え立つ。展望台に上れば、そこからは絶景が広がるが、隅田川から眺める姿も壮観だ。634メートルの電波塔は、夜には「粋」と「雅」にライトアップされる。円やかな色調の照明が、夜空を穏やかに装飾する。スカイツリーをしっかりと視界に捉えることができる桜橋が、隅田川周遊の最上流となる。この桜橋付近は、東京でも屈指の桜の名所だ。初春のシーズンには左右の両岸は一面桜色に包まれ、昼夜を問わず夥しい数の屋形船が行き来している。東京で最も風流な花見を体験することができる場所なのだ。

屋形船の窓からは季節や時間が作り上げる風景が広がる。船の移動とともに変化する光景が、食の雰囲気を盛り上げてくれる。テーブルには季節の料理や江戸前の魚介類が並ぶ。冬季であれば新鮮な魚介類を使った鍋物が中心となるが、その他の季節でも旬の料理を味わうことができる。焼肉、寿司などのスペシャルコースを選ぶこともできるが、夏の標準メニューには、刺身、サラダ、焼物、天ぷら料理がバランスよく揃えられている。

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