プロダクトデザイナー、オラ・イトの哲学”シンプレキシティ”

先日どこかのFM局で、パリでもっとも注目されているプロダクトデザイナーを取り上げていた。
マルセイユ生まれのオラ・イト(Ora-ito/36歳)は、常識に囚われないデザインを次々と産み出し、フィリップ・スタルク(建築・インテリア・家具・食器・出版物・インダストリアルデザイン等さまざまな分野のデザインを手がける総合的なデザイナー)の再来とも言われている。現在、オラ・イトはパリを拠点に、デザイン・建築・コミュニケーションなど横断的にプロジェクトを行っている。
オラ・イトのスタートは、パリの小さなアパルトマンから始まった。19歳の時デザイン学校を辞め、アパルトマンへ持参したコンピュータでデザインの常識を一気に覆してしまったのだ。オラ・イトはルイ・ヴィトン、ナイキ、アップル、リーバイス、グッチ、イヴ・サン=ローランetcの有名ブランド商品、住宅、広告などを勝手にコンピュータ上でデザインし、それをあたかも存在するかのようにネット上で公開したのだった。
ハッキングされた世界の有名企業は騒然とした、しかしその斬新なデザインは大きな話題を呼び、なんとこれを見つけた有名ブランド各社はその自由な発想を気に入り、ブランド側から仕事の注文が舞い込んできたと言うから驚く。

オラ・イトは当時を振り返り語り始めた「はじめた時、野望、ビジョン、エナジー、すべてに満ちあふれていた。この頃のことは今でも覚えている、夢を実現するのに必死だったし、すべてがそこから始まったのだ」と。
そんなオラ・イトの最新作が昨年パリに登場した、カプセルタイプのホテルだ。全29室の客室は、12~16平方メートルとかなり狭い部屋だ。外観はなんの変哲も無いホテルだが、狭い空間でありながら部屋の空間を最大限に活かすためシンプル且つ機能性を極限まで追求、潜り込んで入る寝室は千利休のにじり口からインスパイヤーされたとか。本音を言えば、少し色味が際だち気になるところだが。
オラ・イトのデザイン哲学はこうだ、シンプルさを保ちつつ、そこに複雑さを加える、それがオラ・イトの唱える”シンプレキシティ”なのだと。かの「匂いの帝王」を著したルカ・トゥリンが唱えたものと同じだ、ルカ・トゥリンはシンプレキシティとコンプレキシティを合わせた合成語を作り香りの世界を描いた、いずれも奇才という点で何かしらディープな世界を感じるのだろうか。
さて気になるお値段だが、宿泊料金は1泊209ユーロ(約2万1600円)~279ユーロ(約2万9000円)、高いか低いかは各自の判断に任せて、パリへ出かける方は一度試してみるのも一興かと。

世界にはデザイン界の重鎮がいる、イル・マエストロと呼ばれるジョルジェット・ジウジアーロ、件のフィリップ・スタルク、オリベッティ社のタイプライターで名を成したエットレ・ソットサス、皮革や布で椅子を包むスタイルのマリオ・ベリーニ、エットレ・ソットサス以外はいまだ現役である。さて、オラ・イトの斬新且つアヴァンギャルドなデザインは彼らを越えるだろうか……。

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