ビタースウィートな北欧ジャズ・ボーカリスト、シーネ・エイ

シーネ・エイ、2年ぶりの来日だった。今回のツアーは九州〜関西〜横浜そして東京と随分ハードなスケジュールだったらしい。残念ながらタイミング悪く行けなかった、2年前のライブは「ボディ&ソウル」で行われたが、今回は丸の内にある「コットン・クラブ」で行われた。前回は日本のトリオたちとの共演だったが、今年はデンマークで活動を共にしているトリオを連れてきたらしい。
それも北欧ジャズ・ピアノの雄ヤコブ・クリストファーセン率いての来日だというから本当に惜しいことをした。以前コラムでも書いたが、北欧ジャズは世界の主流になりつつある、風に例えるなら涼風という感じだろうか、足下から吹き上げて来る、うだるような風ではない。かといって爽やかでもない、声はハスキーで白夜にふさわしい声質なのだ。

デンマーク出身のアーティスト、Sinne Eeg、「Waiting For Dawn」(’07年)、「Don’t Be So Blue」(’10年)でデニッシュ・ミュージック・アワード「最優秀ジャズ・ヴォーカル・アルバム」を二度受賞し、ジャズ界に大きな旋風を巻き起こした実力あるジャズ・ヴォーカリスト。

2年前に演奏した「ボディ&ソウル」には、愛車のカブリオーレ(自転車)で疾駆し向かう、陋屋から20分弱の距離だった。青学傍のトンネルを抜け、骨董通りに向かう途中にその会場はある。外階段を降りるとそこは半地下、テラスにあるガラステーブルが雨露に濡れ、その周りにはひと癖ありそうな御仁が数名紫煙をたなびかせていた。ここは二度目、一度目は伊藤君子だった、その時の歌声は大人の色香を醸し出す素敵な夜会であった。

シーネ・エイ、長身でスリムな出で立ち。あの時は、来日したばかりだったせいか幾分声の調子がいまひとつだったが、彼女の歌声は見事なものだった。リリースしたアルバム「Don’t be so Blue(ブルーな予感)」は海外ではベスト10に入るほどの人気だそうだ。彼女の説明によると、この曲は落ち込んでいた時に浮かんだ旋律なのだそうだ。うつむき加減で散歩する中、自分には音楽があるのだと気づいたという、いつも前向きとは行かないのが人間の性である。人の感情は常に揺り動く、そのつらさの中に何かがひらめいたのだと思う、それがこの曲であった。彼女はプロデュースも兼ねていて、シーネ・エイをプロモートしてくれた代表が言うには人任せに出来ないタイプで、自分が全てこなさないと納得しないアーティストだという。楽曲作りをとことん納得いくまで創る精神はそう容易いものではない、その熱意は歌声に響き、夜の緩い感覚を呼び覚ましてくれた。彼女の声はどこかDiana Krallに似ていた感じがする、ほんの少しだけ掠れた声の時だ、でもそれを本人に言えば肩を落とすかも知れない。
一時間ほどのパフォーマンスであった、プロデューサーにアテンドされながら我々に一人ひとり挨拶し、会場を後にした。とてもセンシティブで、どこか官能的なところもあるSinne Eeg、左手の薬指にはきちんとリングが収まっていた、日本人にはない成熟した大人の女性、これからますます目が離せないではなく、耳を閉じられない楽しみなアーティストであることは間違いない。
次の来日は未確定だが、次回は必ずシーネ・エイの歌声を聴きに行きたいと思う。

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