食のグローバリゼーション 49

天然の冷蔵庫で冷凍保存され、自宅でも旅先でも味わえる帽子型の餃子

~ ロシア料理 ペリメニ ~

日本は古くから中国文化の影響を強く受けてきた。日常の生活様式ばかりでなく、食文化においても中国から伝わった料理が日本人の中に浸透している。街の中の飲食店にも、中華料理屋が圧倒的に多い。繁華街では、視野の中に数軒のラーメン屋を捉えることだって珍しいことではない。今やラーメンは中華料理ではなく、日本料理として定着していると言えるだろう。

中華料理屋やラーメン店のメニューの中に必ず含まれる餃子も、日本人の人気料理となっている。小麦粉に水を加えて薄く延ばして皮を作ることや、具材を三日月形にくるむことは、中国の方法が日本にも受け継がれた。ところが具材や、調理方法は日本で少し形を変えた。具材にニンニクが加えられ焼き餃子として食べる。起源は中国にありながら、日本風にアレンジされたわけだ。

餃子は日本ばかりでなくモンゴルを超え、シベリアにまで広がった形跡があるようだ。ロシアの国民的な料理のペリメニは、中国の餃子によく似ている。ただ形状が少し異なり、帽子のような形をしている。皮の作り方も同様なのだが、ペリメニには少量の卵が加えられる。そして、具材についてはロシアで調達しやすい材料が使われる。豚肉、ラム、牛肉などの肉に、玉葱、ニンニク、胡椒などが標準的な具材だが、地域によっては魚肉やキノコ、カブなどを詰めるところもあるようだ。

皮に具材を包んだダンプリングを熱湯や煮立ったブイヨンに入れて、数分間茹でれば暖かいペリメニを食卓に運ぶことができる。ダンプリングを作ってすぐに食べることもあるが、どちらかと言えば冷凍保存しておき、必要に応じて茹でて食べる方が一般的なようだ。

日本で冷凍保存をしようとすると、冷蔵庫の冷凍庫に入れる方法しか考えられない。ところが、ロシアには天然の冷凍庫が用意されている。冬の気温は、一日中零度を上回ることがない。外に出しておけば、自然に冷凍されるのだ。ビールなどの飲物を屋外に置くと、忽ちカチカチに凍ってしまい液体ではなくなる。ロシアで飲物を凍らないようにするには、冷蔵庫に入れ室外より高温に保つのだ。かつては冬のロシアの風物詩の中に、ペリメニを干し柿のように糸を通し軒先に吊るすという光景があったようだ。

ロシアの冬の旅路は冷蔵庫の中を歩くようなものだ。シベリアの人々は狩りや長旅に出かけるときに、この気候を巧みに利用することがある。ペリメニを携帯食として持って行っていくのだ。外気に触れれば自然に冷凍される。長期間にわたって自宅を離れると、最初に心配になるのは食料の確保だ。冷凍されたペリメニは旅人にとって心強い味方となるだろう。空腹を感じたときには、道の脇に積もる雪から熱湯を沸かし、ペリメニを茹でれば自宅と変わらない料理を味わうことができるのだ。

熱々のペリメニは、体を温めてくれるだろう。モチモチした食感の皮を噛めば、ジューシーな味わいが口の中に広がる。バターやサワークリームのスメタナをつけて食べるのが一般的だが、好みによってマスタードや、ホースラディッシュ、トマトソース、酢を使うこともある。

日常の食卓ばかりでなく、遠出の携帯食としても利用できる重宝なペリメニは、新年に少し姿を変えることがある。新年用のペリメニの具材の中に硬貨を入れることがあるのだ。新年を祝うパーティーには、硬貨の入ったものと入っていないものが出される。ペリメニを口に運んだ後、硬貨を口から出した人には幸せが訪れると言われている。ペリメニには、場面に応じて異なる味わい方があるわけだ。

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