食のグローバリゼーション 50

豆の種類とスパイスの配合で無限大の味覚が実現できる豆カレー

~ インド料理 ダール・マサラ ~

日本で子ども達のグループに好きな料理を尋ねると、カレーは必ず3本の指に入る。

数日間カレーが続いても、喜んで食べる子ども達の数は多い。

インドを起源とする料理と考えられ、インド・カレーなどと呼ばれることもある。

ところが、インドにはカレーという料理も単語も存在しない。

インドで本場の味を確かめようとレストランでカレーをオーダーしても、本場の料理などに出会えないばかりでなく、ウエイターやウエイトレスは首を傾げてしまうだろう。

それでは日本の国民的料理として定着しているカレーのルーツはどこにあるのだろうか。

日本にカレーが伝えられたのは明治時代のことで、輸入元はイギリスだ。

英語の辞書でCurryを引けば訳語としてカレーの記載がある。

 

カレーの語源を探ると先ずはイギリスに行き当たる。

ではCurryは、どのようにして英単語の中に組み入れられたのだろうか。

そのルーツには諸説あり特定できないのが現状だ。

ヒンディー語で、香り高いもの、美味しいものを意味する「ターカリー」「クーリー」などの単語を語源と主張する人もいるのだが、タミール語で、野菜、肉、食事、副食などを意味する「カリ」をルーツと推定する人が多いようだ。

いずれが正しいかはわからないが、少なくともインドにはカレーは存在しないし、料理名としてもありえないのだ。

 

とは言っても、インドの人は何を食べているかを説明しようとすると、カレーと応える以外にはないのも事実だ。

インドの食卓には、日本人の目にはカレーと呼ぶ以外に適当な表現が見当たらない料理ばかりが並ぶからだ。

様々な食材をスパイスとともに煮込んだ料理は、カレーとしか表現できない。

食材を選び数えきれない種類のスパイスの配合を変化させれば、無限大のメニューが出現する。

その一つ一つに料理名がつけられる。

 

日本でカレー通を自称する人でも、インドのメニューを見て料理のレシピを解説できる人は、それ程いるものではないだろう。

日本のインド料理店では、メニューを野菜カレー、ビーフ・カレー、ポーク・カレー、チキン・カレー、マトン・カレー、シーフード・カレーなどのカテゴリーに分けて掲載しているところが多い。

ところが、コカテゴリー分類にも、インド食文化と異なる点がある。

ヒンドゥー教で神聖視される牛や、イスラム教徒に忌み嫌われる豚は、インドで食材とされることはほとんどない。

従ってインドには、ビーフ・カレー、ポーク・カレーに相当する分類はまずありえない。


インド人と食事をともにするときに、必ずと言っていい程テーブルに並ぶ料理は、ダール・マサラだ。

スパイスの種類の豊富なインドだが、実は豆も数知れない品種を食材として利用する。

ひよこ豆、ムングダール、ウラド豆、ラージマ豆、ブラックチャナ豆、大豆、チャナダール、ブラックマスール、緑豆、グリーンピース、レンズ豆など、拾い集めようとしてもきりがない。

豆の種類とスパイスの配合の組合せに着目すると、ダール・マサラという料理名すら一つのレシピを表わしておらず、分類名称に過ぎないと言えるかもしれない。

食材とする豆を選び、絶妙な割合で調合したスパイスとともに煮込む。

スパイスは辛味、酸味、甘味を自由自在にコントロールする。

小粒の豆類にはスパイスの香りに包まれ、本場の味を体験することができる。

ヴェジタリアンの多いインドでは、タンパク質の補給源として頻繁に食材とするのだ。

食材は容易に調達できることもあり、家庭料理として最も一般的なメニューとなっており、おふくろの味が実現するレシピだ。

関連記事

アーカイブ

ページ上部へ戻る