アンデスの大地に刻まれるアース・アート 2

地球のエネルギー、雨、風、太陽が作った自然のキャンバスに描かれた地上絵

地球の巨大なエネルギーによって地殻変動が起こり、地球の表面には人の力ではなしえない大きな起伏を作った。

太平洋プレートとナスカプレートは、南アメリカ大陸とぶつかりあり、険しい斜面をもつアンデスの山々が盛り上がった。

急斜面の山肌が太平洋の海岸線近くにまで押し寄せるため、ペルーの海岸線では切り立った断崖が海の波がちぎれる姿をよく見かける。

地球のエネルギーが作り上げた地形は地殻変動が落ち着くと、今度は雨や風の力を受ける。

自身では形をもつことのない水が、硬い岩石を砕き始める。

山から海に向かって川が流れるようになる地球に潤いを与えるのだが、時に凄まじい力を発揮するのだ。

 

水によって削られ流された土砂は風に舞い、地表の姿を変化させる。

ペルー南部の太平洋の沿岸には、海岸沿いに北から南に向かって走る丘陵と東方に聳えるアンデス山脈の麓の間に、パンパ・コロラダ、パンパ・インヘニオと呼ばれる細長い盆地状の平原が形成された。

パンパには長い歳月の間に、東西の高地から水の流れによって、山肌や地表を削り取った土砂が運び続けられた。

洪水のときには、どのような力を加えてもびくともしないような巨大な岩石が、いとも簡単に地表を滑るように移動することもあったのだ。

雨がやみ大地が乾くと、小さな石や土は風によって吹き飛ばされる。

風と雨は各々の特徴を発揮して、それ自身がアートであるはずの地球の表面に新たな平面構成を作り上げる。

 

これで地球アートが完成するかと思いきや、その次にアーティストとして手を加えるのが太陽だ。

赤道近くの緯度に位置するパンパには、焼けつくような厳しい太陽の光が降り注ぐ。

刺すような太陽の光は岩石の表層を酸化し、暗赤褐色に変色し彩色が加えられる。

立体構成、平面構成、着色の工程が順番に完結したわけだ。

 

自然が作り上げた自然アートは景勝地として、世界各国に点在している。


各々の景勝地には数多くの観光客が訪れ、観光地として広く知られるようになる。

絶景を目にした人は、思わず感嘆の声を上げてしまうことだろう。

でも、長い歴史の中で自然のアートを鑑賞するだけでは飽き足らない人々がいても不思議ではない。

 

 

紀元後約800年にわたってナスカの文化を育んだ人々は、広大な平原を自らのキャンバスとした。

東西40キロ、南北50キロの2000平方キロメートルにわたる画材は地球規模だ。

太陽の光によって焼け焦げた暗赤褐色の石を、表面から深さ数十センチ取り除いてみる。

すると、そこには酸化していない明るい色の石が露出してくる。

1メートルから2メートルの幅で石を取り除くと、黒地の地肌に白色のラインが引かれる。

創作行為は子どもの落書きと同じだが、このラインの組合せが様々な幾何学図形、動物、魚、虫、植物を形作るのだ。

大平原に描かれた図形は、地上に立っていては気がつくことはない。

空や高台から見下ろすことによって、やっと何が描かれているかを確認することはできる。

 

 

エジプトのピラミッドとは違いナスカの地上絵は、その目的や作り方はまだ謎のベールに包まれたままだ。


ナスカの地上絵が、最初に文献に登場したのは1550年のペドロ・シエサによる記録だ。

20世紀に入って、ドイツ人考古学者マックス・ウーレや、アメリカ・ロングアイランド大学の考古学者ポール・コソックが研究を開始する。

そして、1940年代からナスカに移り住み、ナスカの地上絵の研究に生涯を捧げたドイツ人、マリア・ライヒェによって、世界中にナスカの地上絵の魅力が紹介され現在に至っている。

 

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