世田谷代官屋敷、そして写真展

冬の風物詩とでも言える、ボロ市のシーズンが始まる。

12月の15・16日と1月の15・16日の4日間、世田谷線の世田谷駅と上町駅沿線で行われる季節行事。

昔、友人夫妻の家族と共に出かけたことがあった、互いによちよち歩きの子どもを連れてのボロ市はきつかった。

友人の誘いに乗って出かけてはみたものの、人、人、人の渦で何もみることも出来ず、人垣からモノを眺めるだけで精一杯だった。

生来人が集まるところが苦手で、早く家に帰りたいその一心だけしかなかった。

そんな気持ちをよそに、子どもたちは嬉しそうにボロ市を楽しんでいる、見たことも無い世界に心が弾むのだろう。

 

世田谷のボロ市の歴史は古いらしい、資料を読むと4世紀前からあったという。

小田原城主北条氏政が世田谷に楽市を開いたのが始まりで、当初は古着や古道具など農産物等を持ち寄ったことから「ボロ市」という名前が付いたとか。

今では日用雑貨や、骨董品、古本、中古ゲームソフトを売る露天もあり、代官屋敷のあるボロ市通りを中心に、数え切れないほどの野外の店が並ぶ。

ボロ市とは名ばかりで、安いと思ったらほぞをかむ場合もある、お祭りの雰囲気でつい買ってしまう人も多いのだろう。

遠目から眺める分には良いが、その群の中に入るのは1度きりで充分である。

 

 

ボロ市通りに代官屋敷がある、以前からその存在は知っていたが入館したことは無かった。

表門は威風堂々の構えだ、漆喰壁と黒塗りの板壁で出来た門構えになっており、屋根は茅葺き屋根となっている。

今回初めて代官屋敷に入った、その敷地内に”1955-64 写真で見る高度成長期の世田谷”と言う特別展が催されていたからである。

目的は特別展であったが、代官屋敷内の木々の多さに圧倒される、柿、カリン、杏、サルスベリ、梅、かや、ゆりのき、ヒマラヤスギ、赤松……あぁ悔しい木の名前が分からない。

主屋は茅葺き、寄棟造りで格式の高い渋みを帯びた造りとなっている、戦災にも遭わなかったようでよくぞここまで保存出来ていると感心するばかりだ。

興味深かったのは主屋裏に”白州”があったことだ、いわゆるお代官様が罪人を取り調べるところである、砂利が敷かれ罪人にとっては痛い思いをしたであろう、それでなくても痛い思いをしているのに。

因みに白洲とは、「砂利敷」に敷かれた砂利の色に由来していとか、白が裁判の公平さと神聖さを象徴する色なのだそうだ、隼町にある最高裁判所の構内に砂利は敷かれているのだろうか……。

 

展示場は2階にあった、階段を上がると壁一面に往時を偲ばせる映画ポスターが飾られている。

懐かしい映画がそこにあった、渋谷東急、渋谷東急名画座、そして下北沢のオデオン座と当時の映画館の名がずらりと並んでいた。

挙げた映画館は既になく、その思い出も疾うに消えてはいるが、僅かながらワンシーンだけ記憶に残っている作品もポスターの中から読み取れるものもあった。

映画館独特の匂いが甦る、本編が始まるまでのわくわく感、3本立てを立て続けに観たあの頃、哀しくてやりきれない映画もあった、映画館は感情の起伏を増幅させる唯一の場所だった。

今ではそんな激しさもどこかへ飛んで、1年に数回ミニシアターで観るくらいがやっと、それ以外はレンタルビデオと精彩に欠ける始末。

 

写真が展示されているフロアーに混じって、常設されている都市跡がショーケース収められていた。

フロアーで目を見張ったのは、レプリカだが位の高い遺体が納められていると思しき石棺、その棺には野毛大塚古墳石棺と書かれており、時代は5世紀前半の頃だという。

他には弥生時代の石器や戦時下のヘルメットなどが展示されていた。

さてその写真だが、高度成長期と呼ばれた時代のもので占められていた。

眺めてもその殆どは記憶にない、または朧気に覚えているものもあったりした。

通称水道道路、正確には井の頭通りと言う、当時の景観と今とではあまりの隔世の感ありというのが偽らざる気持ちである。

 

高度成長期……空前の景気に人は酔いしれ電化製品が売れまくったという。

その頃の三種の神器は、テレビ・冷蔵庫・洗濯機、今では当たり前の電化製品だが人々は欲しくても手が出せない憧れの電化モノだったのだ。

では、新・三種の神器はなんだろう、ネットでチェックすると、デジタルカメラ・DVDレコーダー・薄型大型テレビと謳っている……事実かどうか分からないが、いつの世も電化モノに人気が集中し欲望は際限がない。

 

現在の世田谷は山の手(一角だが)と呼ばれて久しいが、その風景を見渡すと田園風景が拡がっていて、自然が目の前にあった。

イナゴもキリギリスも、アメンボ、ドジョウ、メダカ、アマガエルなどもたくさんいたに違いない。

展示されている写真の中で、変化が大きいのは駅だ、世田谷全域を紹介されているわけではないが、豪徳寺駅・明大前駅・三軒茶屋交差点・千歳烏山駅前・二子玉川駅、どれを見てもどこか映画の撮影所のセットのように思えてしまう。

 

 

成城学園駅、これは北口になるのだろうか、観音開きの車が懐かしい。

 

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