アンデスの大地に刻まれるアース・アート 5

一筆書きによる螺旋状の尻尾に躍動感が漲る地上絵

~ ペルー ナスカの地上絵 サル ~

地球上には数えきれない種類の動物が生きている。

生命体が存在しなかった地球上に、いつどのようにして生命が誕生したのかは、現代の科学的知見を総動員しても解明されない。

人間の起源については、北京原人やネアンデルタール人などのホモサピエンスに求められている。

生物学進化論の視座からは人間は、サルやチンパンジー、ゴリラから進化した生物であるというのが定説だ。

実際のサルの仕草や行動を眺めると、人間に共通する部分が多々観察される。

動物園や様々な施設で人間に愛嬌をふりまいてくれる。

ペットのように飼われることも多いが、日本各地の山々には野生のサルが生息している。

日本で見られるサルの種類はニホンザルだが、熱帯のジャングルに足を踏み入れれば、様々な種類のサルを見かけることができる。

南アメリカ大陸のアマゾンの森林地帯でも、さぞや珍しい姿のサルを見ることができることだろう。

 

古代ナスカの人々は、サルを木と木の間を身軽に移動するところから、天空と地上を繋ぐ格別の動物と見なしていたと考えられている。

ところが、南アメリカ大陸の中でも太平洋の海岸近くに位置する砂漠地帯に、野生のサルが生息していたとは考えられない。

木の枝をブランコのように使って移動しようとしても、肝心の木そのものが乾燥した大地の上には育たない。

ところが、ナスカの地上絵が描かれるパンパ近くからは、サルを絵柄とする皿や壺が数多く出土している。

食器や農具、農作物を持った姿で描かれることが多く、当時の生活を支えた農耕に深く関係した存在であったと考えられている。

 

ナスカで人間とともに暮らしたサルは、パンパから遥か北に位置するジャングル地帯から、ペットとするために連れてこられたと推定されている。

エクアドル原産のスポンディルス貝がパンパ近くから発見されており、遠く離れた地域に暮らす人々とも交流があったことが裏づけられている。

 

様々な幾何学図形が地面に描かれる、ナスカの地上絵の中にもサルが描かれている。

 

パンパの西端近くに描かれるサルのモデルは、クモザルだと考えられている。

全長1.5キロを超える1本の線の一筆書きによって、サルの身体が巧みに描かれている。

前足が顔の前で小さな輪を作り、前屈みの姿勢をとる姿はユーモラスだ。

木の枝の反動を利用して空中を飛び、別の枝につかまろうとしているのだろうか。

スリムな体型には、空中を飛び回るサルの身軽さが表現されているかのようだ。

この図形の中で最も特徴的なのは、螺旋状に描かれた尻尾だ。

実際のサルの尻尾はこれ程までに長くはない。

尻尾の向きも実際とは異なり、上向きに跳ね上がっている。

ところが、ぐるぐる巻きの尻尾と跳ね上がった尻尾には、跳躍するサルにスピード感を与えているかのようだ。

多少のデフォルメがありながらも、身軽なサルがリアルに描かれているわけだ。

地上絵の先頭部に再度目をやると、右手には指が4本しかない。

サルの絵の東方で手が描かれた地上絵にも、左手には4本しか指が描かれていない。

 

ドイツからナスカに移り住み、ナスカの地上絵の研究に生涯を捧げたマリア・ライヘは、一般的にサルとして知られる地上絵を、古代の季節暦と関係するパンパ上の星図の一部だと推理した。

 

北斗七星の中でひしゃくの柄を形作る星々をサルの前足、りょうけん座を頭部、しし座とこじし座を尻尾に重ね合わせている。

ナスカの地上絵は、いつ、誰が、何のために描かれたものかは解明されていない。

地上絵を眺めながら想像を巡らせると、様々なロマンが満ち溢れてくる。

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