アンデスの大地に刻まれるアース・アート 6

一筆書きでコミカルな姿に描かれる海に生きる最大の哺乳類

~ ペルー ナスカの地上絵 クジラ ~

ナスカの乾燥した大地のパンパに描かれる地上絵は、高い展望台に登るか、空からしか確認することはできない。

エリアの中には観測塔が一塔建つだけなので、全ての地上絵を見るには空に飛び立たなければならない。

パンパの南東部にナスカ空港が作られており、ここでセスナ機に乗り込んでパンパの上空を遊覧飛行する。

 

このナスカの地上絵遊覧フライトで最初に目にするのが、パンパの南東端に描かれたクジラの地上絵だ。

飛行航路の関係から図柄は上下が逆向きになってしまうが、クジラが描かれていることがはっきりと肉眼で確認できる。

この地上絵はシャチとして紹介されることも多い。

クジラなのかシャチなのかを正確に判定することはできない。

でも、シャチは生物学的にはクジラ目ハクジラ亜目として分類されている。

従って、クジラと考えるのが妥当だ。

 

クジラの胴体は、古代ナスカのアーティスト達が得意とする技法、一筆書きで描かれており輪郭線に切れ目が存在しない。

最後部には大きく開いた2枚の尾ビレが描かれている。

クジラが巨体を海面の上に跳ね上げるブリーチングをした後、尾ビレを上にして海に着水するときのフルークアップの瞬間を捉えたものだろか。

ホエール・ウォッチングの中では、最もダイナミックなパフォーマンスだ。

図形の端に描かれた尾ビレが、クジラの絵全体に躍動感、スピード感、エネルギーを与えている。

 

海に生きる生物の中で最も大きなクジラに、ナスカの人々も憧れにも似た思いを抱いていたことを容易に想像することができる。

 

ナスカの地上絵でよく見られる渦巻きの図柄は、目の部分に活かされている。

前肢は海の底に向け、口をパックリと開いている。

シンプルな絵柄ではあるが、コミカルで愛らしい。

絵本にそのまま写し取って子どもに見せれば、きっと顔を綻ばせることだろう。

 

古代ナスカのアーティスト達は、初期に多数の動物を描き、後期に抽象的な線画をメインとして地上絵を制作し続けたと言われている。

その推論に従って、クジラの地上絵は後期に描かれたものと推定されている。

クジラであれ、シャチであれ、肉眼で一体の海の生物が描かれていることは間違いないのだが、前肢の先にも何かが描かれているように見える。

数本の短い水平のラインとクマデのような形の図形が見える。

この絵柄の絵解きをした人は、今のところいないようだ。

でも、意図的に何かを描いたものであることに違いないだろう。

海草だろうか、カニだろうか、サソリだろうか。

前肢の先に描かれていることから想像するとクジラが捕えた獲物かもしれない。

と考えると、カニを一つの候補として挙げることができる。

でも、海の波打ち際に暮らすカニは、ほぼ左右対称の形をしているが、ナスカの地上絵の図柄はシンメトリックではない。

残念ながら、カニと判定するにはかなりの無理がありそうだ。

将来誰かが、この絵柄の判定に成功するかもしれないが、ここでは左脚と右のハサミを描いたカニではないかと推察しておこう。

さらに、胴体をななめに太い直線のラインが横切っている。

これでは折角描いたクジラの絵が台無しだ。

しかし、このラインも間違いなくナスカのアーティスト達が引いた線だ。

クジラの胴体の輪郭線がこのラインによって消されていることから、クジラの絵が描かれた後に、ラインが横切った後に間違いはないだろう。

クジラよりももっと大きな図柄を描いたラインの一部なのだろうか。

それを確認するにはセスナ機の高度を上げ、広角でパンパ全体の図柄を鳥瞰しなければならない。

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