ガラパゴスのアニマル・アート/ネイチャー・アート 7

真赤な喉袋を上空に向けてメス鳥にアピールするオス鳥

~ ガラパゴス ノース・セイモア島 グンカンドリ ~

ガラパゴス諸島は約1500万年前から、太平洋の海底で起こる火山活動によってできた島々だ。

長い年月を経て植物が生え緑で包まれる島もあるが、未だに溶岩が地表にむき出しになったところもある。

植物が溶岩の大地に根をはることは容易いことではないだろうが、逞しい植物は溶岩の隙間を這うようにしっかりとした根を下ろす。

 

海底が隆起することによって形成されたノース・セイモア島の海岸線には、溶岩大地にパロサントが林を作った。

溶岩の大地に育つ木には生命力が溢れ出していてもおかしくないのだが、白色に近い色合いの幹や枝には、ひ弱さが感じられてならない。

無味乾燥した環境で、ひたすら雨を待っているかのようだ。

日本であれば冬の山でしか見られない風景だが、赤道直下のガラパゴスには厳しい陽射しが降り注いでいる。

パロサントは乾燥した気候に強く、雨季の時期を除けば緑をつけることがない。

 

パロサントには、「聖なる木」という意味がある。

木片には樹脂分が豊富に含まれており、濃厚で甘い芳香を周囲に放つ。

香木として焚くと、幻想的な煙のたなびきと香りによって、精神と肉体が清められるような感覚になる。

幸福を呼び込む木として、インカ帝国の時代からアンデスのシャーマンは、ヒーリングや儀式の際に場を清めるために使っていた。

 

パロサントの甘い香りにひかれるのか、枝には数多くのグンカンドリが羽根を休める。

ガラパゴス諸島には、オオグンカンドリアメリカグンカンドリ2種類が生息する。

両種とも体長は1メートルを超え、翼を広げると2.5メートル近くになる。

卓越した飛行能力を備え、羽ばたくことなく長時間空中を移動することができる。

悠然と飛ぶ姿は、翼竜を思い起こさせる。

体全体は黒い羽根に覆われ、尾羽根は二股に深く割れている。

くちばしは長く、先端は下方に向いて鋭くとがっているのが特徴だ。

グンカンドリは空を飛ぶのは得意なのだが、地面を歩いたり巣を作ったりするのは、あまり得意ではない。

枯れ枝にとても簡素な巣を作って生活する。

枝を注意深く捜しても、どこに巣があるのかはよくわからない。

枯れ枝の林にグンカンドリが生命力を持ち込んだと言いたいところなのだが、白色の枝に黒色の羽根では地味で生気が漲っているとは感じられない。

ところが、この殺風景な光景が彩り鮮やかになるときがある。

それはグンカンドリのオスが求愛行動をするときだ。

 

写真(ガラパゴス07-2)

 

メスを求めるときオスは、赤色の喉袋に空気を送り込んで膨らませる。

はちきれそうな喉袋は、バレーボールくらいの大きさはあろうか。

袋に空気を満たすには、ゆうに10分はかかる。

緑のない殺風景な林に突然、真赤な花が咲いたようになる。

オスのグンカンドリは枯れ枝に彩りを添えながら、空を飛ぶメスを待つ。

頭上にメスの姿を見つけたならば即座に体をのけぞらせ、自慢の赤い喉袋をメスに見せる。

翼を左右に大きく広げ、かん高い鳴き声でメスを呼び止める。喉袋の美を競いながらのメスの争奪戦だ。

一本のパロサントの木に、何羽ものオスがいたとしても、オス同士が互いに争うことはない。

グンカンドリのオスは極めて紳士的なのだ。

メスに選ばれるまで、ひたすら赤い袋を膨らませて待ち続ける。

メスが好みの喉袋を見つけてオスに寄り添えば、めでたく恋愛が成就する。

幸福をもたらすパロサントの木は、グンカンドリのカップルに幸せを与えているわけだ。

現在のガラパゴス諸島には、外来種などによる被害もなく数千つがいのグンカンドリが生活を送っている。

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