アンデスの大地に刻まれるアース・アート 8

中心点から放射状に広がる幾何学的描写

~ ペルー ナスカの地上絵 海鳥 ~

現代の社会では、目覚ましい勢いグローバル化が加速している。

インターネットなどの情報ネットワークが、世界各国を瞬時に繋いでくれる。

地球の裏側で今まさに起こっていることすら、動画で見ることができるようになった。

地球上を網の目のように作られた航空路に乗っかりさえすれば、世界のどのような地域の土を踏みしめることができる。

しかし、それは全て何がしかの媒体を使うことによって実現されるグローバル化だ。

 

海の上を飛ぶ渡り鳥は、自分自身の体内にグローバル化の手段を備えている。

 

季節ごとに快適な生活環境を求めて、海を飛び越えてしまう。

その生活感や跳躍力に驚嘆せざるをえない。

空を飛ぶ鳥の存在がなければ、人間社会には飛行機という便利な乗物が誕生することはなかっただろう。

四方を海に囲まれた日本の海岸線に行けば、必ず海の上を優雅に飛ぶ鳥の姿を見ることができる。

カモメ、ウミネコなどがその代表例だろうか。

南アメリカ大陸の沿岸に行けば、アホウドリ、カツオドリ、ネッタイチョウなどが、太平洋の上を堂々とした姿で飛び回っている。空を飛ぶ鳥を眺めていると、見知らぬ土地へのロマンが掻き立てられるものだ。

 

古代ナスカに暮らした人々も、空を飛ぶ鳥を眺めながら、異郷の地への憧れを抱いたに違いない。

空の中を舞いたいという果てしない思いが、ナスカの乾燥した大地のパンパに地上絵として刻み込まれている。

全長約135メートルの巨大な海鳥の姿が、パンパのほぼ中央部に描かれている。

ペルーの南海岸には、ペリカンやサギなど多種類の海鳥が生息している。

海岸線にも近いナスカの大地の上空にも、数多くの海鳥が舞っている。

赤道近くの太陽の光が土から水分を奪う乾燥した大地に、海から飛んでくる海鳥は、水を持ち運ぶ生物として崇められたことだろう。

海水は天に昇り、雨となって地上に恵みをもたらす。

海鳥は、豊かな水を湛えた海岸線から水をもたらす存在として描かれたと推測される。

 

古代ナスカのアーティストが描いた海鳥は、クチバシ、翼、脚、尾羽などの各部が、近くにある中心点から、放射状に広げられた構図をとっている。

生物を幾何学的に描写するナスカの人々が得意とする描写方法だ。

左右に大きく開いた翼には、どのような遠方にでも飛んで行けるエネルギーが漲っている。

南南東に向かって大空を舞う姿が、ナスカの地上に焼き付けられているわけだ。

左右に広がる海鳥の翼は5本の羽根で描写されている。

有名なハチドリは3本の羽根で描かれているのに対して、海鳥は2本多い羽根を備えている。

より遠くまで飛ぶためには、多くの羽根が必要なのだろう。

通常は海鳥として紹介されている地上絵ではあるが、これをコンドルと推論する人も数多くいるようだ。

ところが、クチバシが鉤状とはなっていないため、海鳥と考えるのが一般的のようだ。

顔からまっすぐ前に長々と伸びるクチバシは、今にも海に泳ぐ魚を捕えそうだ。

クチバシと対称的な位置に描かれる尾羽もとても長く、鳥の体全体の約半分の長さを占めている。

6本の羽根で描かれる尾羽は、空を羽ばたきながらも決して方向感を失うことがなさそうだ。

尾羽の後方には、2つの等辺が平行に近い鋭角二等辺三角形で描かれた別の地上絵が描かれている。

ナスカの大地には同様の幾何学図形が幾つか描かれ、滑走路として紹介されている。

鳥の後ろに描かれる滑走路は象徴的だ。

古代ナスカの人々も飛行機という乗物を既に頭の中に思い描いていたのだろうか。

滑走路から飛行機に乗って鳥の後を追おうとしたのかもしれない。

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