褐色の岩肌を歩く色鮮やかな足元がおしゃれのポイント
~ ガラパゴス ノース・セイモア島 アオアシカツオドリ 1 ~
ガラパゴス諸島の玄関となる空港が設置されている、バルトラ島の北方に位置するノース・セイモア島の海岸地帯には、溶岩がごろごろしている。
火山から噴出した褐色の石がオウトツを作る光景は無機質で、全ての生物を寄せ付けないような雰囲気を漂わせている。
ところが、この殺風景な空間に、鮮やかな彩りをつける生物が暮らしている。
無味乾燥な褐色の岩肌に、目の覚めるようなコバルトブルーの色彩が、上下左右に小さく動く。
アオアシカツオドリは、その名の通り真っ青な足をもっている。
鮮やかな彩りは一際目を引く。
自然に生きる生物に絵画的ともいえる色彩を備えていることは驚異に値する。
断崖絶壁の岩肌には緑などないのだが、漁場に近い海岸線はアオアシカツオドリにとっては、絶好の生活の場なのだ。
数十羽が一つのグループとなって、コロニーを形成している。
アオアシカツオドリの足にはカロチノイドやコラーゲンが豊富に含まれ、太陽の光に反射して真っ青な彩りを放つのだ。
顔ではなく足をチャームポイントとしている。
鏡に向かって化粧などしない鳥ではあるが、なかなかのおしゃれぶりだ。
自慢の足には幅の広い水かきがつき、岩場を扇状に鮮やかな彩りを添えている。
色彩の元となっているカロチノイドには免疫作用を強化する効果があり、健康の指標となっている。
繁殖のときには、メス鳥はオス鳥の足の色合いに注目し、より鮮やかな青い足の持ち主を選ぶ。
足の色を見ることで、オス鳥の健康の状態をチェックしているのだ。
足の色彩にどうしても視線が集中してしまうのだが、体全体を眺めると腹側は白色、背側は茶色の彩りをもっている。
翼部は茶色が濃くなり、色彩のコントラストを作っている。
覆面を被ったような顔に丸い目をつけて正面を向いた姿には、人懐っこさが感じられる。
カツオドリは英語では、ブービー「Booby」と呼ばれている。
この英語名の語源は断定できないのだが、スペイン語のボボ「Bobo」に由来すると言われることが多い。
ボボには道化師や愚か者の意味があり、のんきでおどけた姿のカツオドリの特徴をうまく表現しているということができるだろう。
カツオドリは地上での動作は鈍く、歩く姿にはぎこちなさが漂う。
物怖じすることなく、よちよちと人間に近づいてくるため、容易に捕まえることができそうだ。
実際に大航海の時代には、帆船の乗組員などに大量に捕獲され食料にされたことがある。
また、陸上では赤道直下の太陽の陽射しに晒されるため、口を開けて暑さを凌いでいる。
ひょうきん者のカツオドリは、ガラパゴス諸島では人気者だ。
地上では不器用に振舞うカツオドリは、海の上に出ると精悍な姿を見せてくれる。
翼を左右に広げると1メートルを超え、全長80センチ前後の体を巧みに操り、海の中に果敢にダイビングして魚を捉える。
カツオドリが群れを作って狩りをする光景には迫力が満ち溢れる。
得意の採餌でしっかりと栄養補給をしたためか、岩場にはあちこちにフンの跡が残されている。
褐色の岩が真白なまだら模様をつける。
乾ききった褐色の岩場にも力強い生命が宿っていることを裏付けているのだ。
アオアシカツオドリは、ダーウィン島、ウォルフ島、バルトラ島を除く全てのガラパゴスの島々に生息し、その数は2万羽を超える。
ガラパゴス諸島にはアオアシカツオドリの他にも、マスクカツオドリ、アカアシカツオドリの2種類のカツオドリが生息している。
いずれのカツオドリも諸島固有の亜種であり、足の色に特徴をもっている。