食のグローバリゼーション 59

300種類近くのレシピをもつスパイスたっぷりの肉団子

~ トルコ料理 キョフテ ~

日本は明治維新を境として大きく生活習慣が変化した。

畳が敷かれた生活空間にはフローリングの洋間が加えられ、身に着ける衣服も着物から洋服が主体となった。

合理的な欧米のスタイルが伝統の様式を圧倒するようになった。

人々の基本的な生活を支える食生活にも欧米化の流れは押し寄せる。

四方を海に囲まれた日本では、タンパク源としては魚貝類が中心であった。

そこに肉食を中心とする欧米の食文化がもたらされた。

厚切りのステーキをフォークとナイフで切りながら食事をする人は、明治維新直後であれば、とてつもなくハイカラに見えたことだろう。

今では飲食店街に行けば必ず、換気扇から香ばしい煙をたなびかせる焼肉屋がある。

肉料理は既に日本料理の主役になっている。

体の大きな動物の肉でも適当な大きさにスライスすれば、ステーキや焼肉で味わうことができるが、食べにくいことや、噛み切れないで困ることもある。

そのようなときには、細かく刻んだ挽肉を利用する。

挽肉にすれば食べやすいばかりでなく、様々な料理に活用することができる。

ハンバーグ、ミートボール、メンチカツ、つくね、餃子、マーボー豆腐など、バラエティーが大きく広がる。

日本の伝統の食材に視線を戻すと、かまぼこ、ちくわ、つみれ、なども魚のすり身を使っており、これらも挽肉料理の仲間に加えられるかもしれない。

今では日本の家庭の主婦は、スライス肉と挽肉を適材適所で使いこなしている。

世界的にも肉の加工方法は巧みに使い分けられている。

トルコにも焼肉料理と挽肉料理が存在する。

焼肉の代表例がケバブであり、挽肉料理の代表例がキョフテだ。

兄弟分のような2つの料理は、トルコ料理の双璧と言って過言ではないだろう。

キョフテをシンプルな日本語に置き換えると肉団子となる。

丸いミートボール状のものや、平たいハンバーグ状のものをしばしば見かけるが、最も代表的な形は葉巻型のシリンダーによって作られた俵状のものだ。

肉の素材は日本であれば、牛肉、豚肉、鶏肉となるところだが、イスラム教徒の多いトルコでは、ヒツジの肉がメインとなる。

キョフテには挽肉に、様々な具材が混ぜ合わされる。

タマネギ、ピーマン、ニンジンなどの野菜の他にスパイスを加える。

アカトウガラシ、コショウ、クミンをはじめとして、ナツメグ、コリアンダー、サフランなどが使われる。

スパイスは料理の味をオリエンタルに引き締めるに留まらず、エレガントな香りを放ってくれる。

ほんの一つまみ加えるだけで、まるで違う味わいとなる。

トルコでも簡単レシピが望まれているのか、キョフテ用に便利な調味料が販売されている。

キョフテバハルには、キョフテに必要なスパイスが絶妙な割合でブレンドされている。

挽肉の団子とキョフテバハルさえあれば、簡単に一品が完成するわけだ。

日本でもハンバーグなどにキョフテバハルを少し加えると、たちまちトルコ料理に変身する。

キョフテの食材には数えきれないレシピがあるのだが、調理方法にも様々な方法がある。

コンロやオーブンで炙り焼きにしたり、フライにしたり、蒸したり、湯の中でボイルしたりと多種多様だ。

エーゲ海に面するトルコ第3の都市イズミールには、キョフテをトマトペーストで煮込む名物料理があり、イズミール・キョフテとしてトルコ全土に広まっている。

トルコには300種類近くのキョフテがあると言われている。

トルコ人にとってキョフテは、国民食とも言える存在だ。

街の中にはいたるところにキョフテの専門店、キョフテジが暖簾を出し、トルコ人の食文化を支えている。

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