アンデスの大地に刻まれるアース・アート 10

パン・アメリカン・ハイウエイ沿いに描かれる2つの図形

~ ペルー ナスカの地上絵 海草・手 1 ~

ナスカの大地に果てしなく広がる乾燥したパンパに、古代の人々は数々の地上絵を描いた。

全ての図形を一望することができれば、さぞや壮観な景観となることだろう。

でも、ナスカのキャンバスはあまりにも大きく、地上絵の全てを一つの視界に収めることはできない。

上空を遊覧飛行する飛行機から数分間隔で眼下に登場する絵柄を一つ一つ確認していくしかない。

ところが一箇所だけ、複数の地上絵が視界に入るところがある。

 

ナスカのパンパを北西から南東に向かって貫くパン・アメリカン・ハイウエイ沿いに、2つの地上絵が描かれている。

パン・アメリカン・ハイウエイは、北はカナダのビーバークリークから南下し、南アメリカ大陸に入るとアンデス山系の麓を貫き、チリのサンティアゴまで走り抜ける。

 

パンパの中央近くには道路の西側に展望用のミラドールが立ち、その北側に海草、南側に手が描かれている。

ナスカの地上絵の中で動物をモチーフとするものは30を超えるのに対して、植物が描かれたものは珍しい。

 

それもナスカの大地では見ることのできない海草となると、ナスカの人々は海や、水に強い憧れをもっていたのではないかと想像される。

海草を燃やして灰にすれば肥料となるばかりでなく、太平洋で水揚げされた魚介類を海草で包んで運ぶと海の幸は干乾びることはない。

 

ナスカの周囲から出土した土器には、肥沃や水をイメージさせる植物として、海草がしばしば描かれている。

約47メートルの大きさで描かれる海草は、ナスカのアーティストの得意技である一筆書きによって描かれる。

枝の先端は全てふたつに枝分かれしている。

シンプルなデザインの中にも、きめ細かな装飾が施されている。

緩やかなカーブを使って表現される海草は、海の水の流れに身をまかせて、海面や海中をしなやかにたゆたうことだろう。

曲線で描かれる地上の部分とは対照的に、地に足をつける根は10本の平行線で描画されている。

丈夫な根が地中に食い込めば、急な波にもさらわれることはなさそうだ。

 

ミラドールから見て海草の地上絵と対称をなす位置には、手の地上絵が描かれている。

 

パン・アメリカン・ハイウエイの方向から眺めると、万歳をしているように見える。

図柄を90度回転すると、何かをつかみとろうとしているようにも見える。

土の上で静止した図形でありながらも、アクティヴな動きを感じとることができる。

古代ナスカの人々も喜びの感情を表すときには、両手を上に挙げて万歳のポーズをとったのだろうか。

海草と同じように一筆書きで描写された指は、左手は5本揃っているのに対して、右手には4本しかない。

これはナスカでしばしば見られる特徴で、サルの地上絵とも共通している。

 

パン・アメリカン・ハイウエイや90度回転した方向からは手に見える絵柄は、さらに回転角度を増して180度とすると、大きく印象が異なってくる。

人間の手とばかり思っていたデザインが鳥の足に変化する。小さな子どもであれば、ヒヨコのキャラクターと見るのではないだろうか。

子どもの手のひらに、小さなクチバシを近づけてきそうだ。

羽根のない胴体に比べると足がやたら大きいが、愛嬌溢れる姿と言うことができるかもしれない。

海草にしても手にしても、シンプルに描かれた絵柄からは、様々な想像力が掻き立てられる。

ナスカのアーティスト達は、見る人が自由な発想で豊かなイメージを膨らませることができるように、あえて単純な図柄を描き続けたのかもしれない。

その意図は現代において、ずばり的中したわけだ。

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