アンデスの大地に刻まれるアース・アート 11

真っ青な空の下に絶妙な色彩のコントラストを築く褐色の地肌と白色のライン

~ ペルー ナスカの地上絵 海草・手 2 ~

ナスカの地上絵は、東西40キロ南北50キロに及ぶ広大なパンパの地表に描かれている。

ナスカに訪れた人の大半は、セスナ機に搭乗して上空から地表を眺めながら、眼下に姿を現すアート作品を確認する。

図柄のモデルとなった動物や植物を思い浮かべ、古代ナスカのアーティストの表現力に感嘆する。

西洋絵画を見るときには、作品から少し離れたところから鑑賞するのがよいと言われることがしばしばある。

ナスカの地上絵遊覧フライトは、この鑑賞方法を搭乗者に提供していることになる。

 

巨大なカンバスに描かれる地上絵には、古代ナスカに暮らした人々の創造力、描写力に加え繊細な美的センスが漲っている。

約30分のフライトは、離陸から着陸までの全ての瞬間がアートシーンで埋め尽くされる。

一つ一つの地上絵の輪郭線を空から眺めることが、ナスカのアート作品を鑑賞する最良の方法であることに間違いはないが、絵画を見るときと同じように、間近でタッチや筆遣いに触れてみたくなるものだ。

しかし、約2000平方キロのパンパは、ただひたすら大地が広がるのみだ。

パンパに降り立っても、そこには道路も道標も何もない。

パンパの中心線をまっすぐ歩いたとしても、一日仕事となってしまう。

しかも、大地には熱帯の厳しい陽射しが容赦なく照りつける。

人里などどこにもないので、腰をかけて休養をとることはおろか、陽射しを避けることすらできない。

パンパに足を踏み入れたならば、石が無数に転がる大地をひたすら彷徨い続けることになるだろう。

何人をも寄せつけないパンパではあるが、僅かに一本だけ人の往来を助ける近代的な道路が敷設されている。

 

パン・アメリカン・ハイウエイは、乾燥した大地を北西から南東に向かって貫いている。

唯一、車を走らせることができるハイウエイは、現代に生きる人々の動脈として機能している。

このハイウエイを端から端まで車で走ると、道の両側に地上絵を見ることができるかと思いきや、窓からの景色は褐色の大地が広がるのみだ。

どんなに目を凝らして周囲を見ても、残念ながら地上絵らしきものを見つけ出すことはできない。

一直線に走るハイウエイは、あくまで生活用の道路であって、アート鑑賞のための道ではないのだ。

ただ1ケ所だけ、パンパの中央部付近の道路沿いに、ミラドールと呼ばれる観測塔が立っている。

平原の中にポツンと立つ鉄塔は、ナスカの地上絵がなければ少し異様だ。

タワーに登ると、真下に2つの地上絵が確認できる。

塔の北側に海草、南側に手が描かれている。

約20メートルの高さが間近と言えるかどうかは少し疑問だが、地上絵の規模を考えると間近と言って差し支えないだろう。

太陽の光によって焼け焦げた褐色の石を取り除きながら、白色のラインを描く古代ナスカの人々の息遣いを感じるとることができる。

退ける石の深さ表面から深さ数十センチ程度だが、数十メートルから数百メートルまでの長さのラインを引くとなると、気の遠くなるような時間と労力が必要であったことだろう。

地上絵を描く目的にはじまり、デザイン方法、描画方法、制作期間など、答えを得ることができない疑問が果てしなく思い浮かんでくる。

2つの地上絵を眺めながら少し視線をあげると、その先には果てしないパンパが広がっている。

褐色の地肌が続く彼方の水平線には、真っ青の空が隙間をあけることなく接する。

数少ない配色だが青色の空、褐色の大地、白色のラインが、ナチュラルで絶妙な色彩のコントラストを築き上げている。

 

写真(アンデス11-2)

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