お国自慢フリーペーパー、渋谷パルコから発信

書店に行くと必ずあるものを探す、それはPR誌。

”ちくま・波・図書・一冊の本”等々と言った小冊子が、出版社を通じ販促用として発行された定期刊行物。

小冊子の裏には値段が印字されているが、その殆どは無料である。

但し、そのPR誌が書店全てに置かれているわけではない、大半は大きな書店というのが実情だ。

それを手に取りたいのであれば定期購読という方法もある、1200円ほどの年間購読料を払えば自宅へ郵送してくれる有り難い小冊子である。

 

PR誌の中身と言えば、新刊本の案内そして書評、エッセイに連載小説、座談会等が掲載され通常の小説よりも面白く、読書好きにはたまらない書誌だ。

それと同じく最近のフリーペーパーも昔と違い内容が充実していることに気付く、いわゆる広告収入を元に無料で配布される冊子だ。

登場した頃は広告ページが先行したものばかりだったが、ここへ来て地域密着型の情報や生活情報が満載され、興味を引くものが多くなってきている。

因みに、電通の”日本の広告費”2012年版のデータによると、フリーペーパーの発行紙数は1,560紙にも上るという。

フリーペーパーはウェブへの移行と休刊が進んでいると言われているが、活字離れが叫ばれる中でなかなかどうして紙媒体の勢いは強いと感じる。

そんな中、渋谷のパルコパート1でフリーペーパーの全国紙を見つけた。

この存在は以前知り合いから聞いていて、用事がない限りほとんど渋谷へは出かけることがなかったので、私事の帰りに寄ってみた。

パルコも昔の面影はなく、なんでもありの商業施設と化してしまった感があった。

唯一好きな階は地下のステーショナリーコーナーと輸入書籍位だ、昔を懐かしんでも仕方ないが、このビルのフロアーに足繁く通いある衣服を買い漁った思い出がある。

いまや高嶺の花である、その衣服は。

話題が横道に逸れてしまった、その全国紙のフリーペーパーだが思いの外少なかったのが気に掛かる。

イメージでは大きな書棚にずらりと並んでいると思いきや種類にして20数冊程度であっただろうか、それも雑然と置かれていて折角の冊子がかわいそうに思えた。

冊子を取り上げては元の場所に返さず、他のフリーペーパーの上に重ねてあったりする、たとえ無料配布を旨とした冊子であっても元にあった場所へ返してもらいたいものだ。

取りあえずいくつかの冊子を拡げてみると、有料の冊子でもおかしくないくらいの出来映えで、いわゆるファッション誌と見まがうほど熟れた冊子もあった。

企業先行のものもあれば、個人で発行しているものもあったりして、各々が個性豊かで創造性に富んでいた。

その中のいくつかを紹介してみよう、”Have a nice Photo”、この冊子は地域×写真をコンセプトに、週末カメラを持って出かけたくなるような土地を毎回紹介して行くと、扉に書かれていた。

紙質も凝っている、A4サイズの42ページ、初号であった。

創刊号は”横浜元町の坂道さんぽ”、元町は坂の街と言っても良いくらいだ、これを携え元町を散策するのも一興かも知れない。

広告らしきものが見当たらない、あるのは表紙裏ページと巻末にあるくらい。

どこかの若者向け情報誌みたいに、その殆どが広告で成り立っているようなスタイルではなかったことに驚きを隠せなかった。

次に、地方色を前面に打ち出したCradle、巻頭には”美しくなつかしい、日本をのせて”と言うサブタイトルが書かれた出羽庄内地域の文化情報誌。

庄内をひとつのCradle(ゆりかご)に見立て、失いつつある大事なものを庄内から育て、発信していきたいと謳っている。

発行部数は3万部、配布地域は庄内と内陸そして県外となっていた。

それにしても地方で3万部とは部数規模が大きいと感じる、特集記事は”庄内菓子めぐり”、まさに地域興しの神髄である。

湊町の菓子文化が酒田にあり、城下町の伝統を引き継いでいるのが鶴岡の郷土菓子とヘッドに書かれていた。

山形の菓子を食した経験がないのでコメントはできないが、米そして桜桃、紅花などのイメージ以上に和菓子の伝統は180年もの長き歴史に渡って培われていたのである。

庄内地方の歴史を知れば知るほど、食文化に対する造詣の深さがこの冊子から受け取れる、都会に一極集中することだけがもてはやされている現在、地方の悦びは地方にあってこそのものなのだ。

他には農業を北海道から元気にという冊子やカルチャー色を全面に出したもの、少しペダンチックな雰囲気を持たせた企業PRもの、またファッション誌かと思わせるような冊子が所狭しにフロアーの一角に置かれている。

これを企画したのは” ONLY FREE PAPER”と言う会社、”「フリーペーパー」「フリーマガジン」と言っても、それらは有料で発行されている「本」と何も変わりません。

そこには書き手・作り手がいて、その読者が必ずいるのです。

その割にはそれらを繋げる場所が今まであまりにもなかったと、そうは思わないでしょうか?カフェや本屋・アパレルショップの一角にポツンと置かれるフリーペーパー、あくまで「サブ」扱いでした。

フリーペーパーやフリーマガジンだって作り手がいて読者がいる、ただ正当な価値を保有しておける「場所」がなかっただけなのです。

ということで、その「場所」を作りました。

結果的に「モノを売らない実店舗」という全く新しい業態が生まれました”と、ウェブ上でコンセプトが書かれていた。

“正当な価値を保有しておける場所”、この言葉を読みはっとした、光が当たっているものを紹介するのは容易いことだ、光の当たらないものにこそ目を向けるべきだと、そんな熱い思いがこちらの耳元でざわめきだした。

ネット中心の世の中で、アナログの活字はロマネスクを強くする、そうであって欲しい。

 

KC3Z0176

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